外来小児科学会|ワークショップ「子どもの貧困を考えるpart4」報告(和田浩@健和会病院)

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2014年8月30日から31日にかけて大阪国際会議場などで開催された日本外来小児科学会年次集会のワークショップ「子どもの貧困を考えるpart4」について、長野の健和会病院小児科の和田浩医師から報告を頂きましたので、和田先生の了解をえて報告メールを紹介します。

このワークショップは、民医連の小児科医師などが中心となって提供したものです。

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みなさま
和田浩@健和会病院小児科です。
 
8月30-31日大阪で行われた日本外来小児科学会で「子どもの貧困を考えるpart4」を行いました。その報告をします。
参加者46名(医師16、看護師10、保育士3、事務10、公務員1など)、前半は演題と事例検討、後半はグループワークを行いました。

<演題>
「病児保育から見る子どもの貧困」大里光伸(大阪きづがわ医療福祉生協・医)家に洗濯機がなく清潔にできない・病児保育の後にファミリーサポートに泊まりであずけられるなどの例が紹介され、貧困により子どもが不安を抱え落ちつかなくなる姿が報告されました。
「外来診療での子育て世代実情調査」佐藤洋一(生協子ども診療所・医)
「全国10病院の入院患児142症例のまとめ」武内一(佛教大学・医)
「こどもの貧困 妊娠中から1ヶ月健診までの児の社会的背景について」山口英里(千鳥橋病院・医)
この3演題は、佛教大学と民医連小児科の共同研究で取り組まれている子どもの貧困の実態調査の中間報告。
 
<事例検討>
「体重増加がほとんどないことから社会的困難さが明らかになった妊産婦と小児の事例」正木伸枝(川崎協同病院・看)第2子の妊娠経過中、妊婦も胎児も体重増加がほとんどないことから、行政・乳児院・児相などもふくめた個別支援会議を行って支援。貧困、虐待の連鎖、若年出産、依存症、金銭管理・食生活など生活スキルが身についていない、育児能力の未熟性、第1子の発達の遅れ・情緒不安定など多岐にわたる困難が複合。「妊婦自身に問題があり、彼女の言うことばかり聞いていていいのか」という疑問もあったが、スタッフが彼女を理解し関わることで、当人・病院・児相・福祉との関係が確立し改善の方向が出せた。
 
<グループワーク>
 4グループに分かれ、貧困にどう気づくか、どう援助するかを中心に話し合いました。ここでも様々な事例や経験が出されました。
・「医療費の自己負担分が払えないので、通院を月1回でなく2か月に1回にしてほしい」
・外来で喘息の子に「お金かかるから発作起こすな」と父が怒る。
・お金がなく時間もないため、心のゆとりも持てず子どもを叱りつける母が増えていると感じる。
・喘息で定期通院が必要だが、母子家庭で「仕事が休めない」と中断。
・病児保育に昨日着ていた服でそのまま来る。
・「お金がないから明日は病児保育に来れない」
・生活保護。市の担当者から「あまり医者に行くな」と言われる。
・予防接種が進まない時に背景に貧困がある。
・母を支えていくことが必要。小児科はずっとつながっていくことができる。
・支えたい人ほど繋がりにくいけれど、小児科診療の場はそのきっかけになる。
・困難を抱える人が社会への信頼感を築けるよう医療機関が役割を果す
・子どもへの待ち合いでの口調や手の出し方を共有する
・小児科が「気持ちがふんわりする」場であることが大切。
・貧困な家庭は時間外に受診することも多い。「なぜ時間外ばかりに」ではなく「よう来てくれた」と思うようにしている。
 
<まとめ>
参加者数は例年の倍で、しかも「実際に貧困事例を知っている」という人が多く、子どもの貧困への関心が高まり、多くの小児医療関係者が「見える」ようになってきていることを実感しました。それは子どもの貧困が深刻化していることのあらわれでもあるのでしょう。貧困に取り組んでいくと今回検討を行った事例のように様々な困難が複合している事例に出会います。「本人に問題がある」「自業自得」と見られてしまうことも多いのですが、そうした姿こそが、貧困の現れ方であると思います。生活スキルを身につけ、依存症を抜け出す援助をどう行っていくか、非常に遠大なテーマですが、それを考えていく必要があると思います。
 
和田浩

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