寄稿|「ハンガリーから医師をめざす日本人」というニュースを見て(徳山通・全日本民医連医師部)

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    医学生 初期研修医 後期研修医 医師
2014年10月19日 NHK放送 特集 アジア・太平洋 ヨーロッパ・ロシア

ハンガリーから医師をめざす日本人

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この秋、NHKのニュースで何回か「ハンガリーから医師をめざす日本人」というニュースが取り上げられています。こうした番組をみた感想が寄せられましたので紹介します
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「ハンガリーから医師をめざす日本人」というニュースを見て

寄稿 徳山通(全日本民医連医師部)

全体で270人の日本人留学生がハンガリーで医師をめざしているとの報道がNHKでされた。これまでも300人近い医学生がハンガリーにいるとの情報は あったが、それを裏付ける報道だ。ルーマニアやブルガリア、ポーランド、中国など、医学生を世界中から集め、大学の資金源にするような動きは他の国にもあ り、日本から相当数の学生が海外の医学部で学んでいることが推測される。

この報道とは別に、ハンガリーで医師免許を取得し、日本の国家試験の受験を申請、予備試験を免除され直接国家試験の受験につながった学生が2014年2月の国試を7名程度受験し、合格者もいることは確認されている。

これまで東欧の医学部からは予備試験(10 人に一人程度しか合格しないといわれる)に回されると思われていただけに、ハンガリーの大学から日本の医師をめざす場合、成績や申請の準備次第では予備試 験ではなく国家試験を受験できる(厚生労働省は一人ひとり審査の上で判断しているという立場)ことは、ハンガリーで学ぶ学生にとっては明るい希望だろう。

ハンガリー以外の国から国家試験の受験を希望した学生がどのような扱いとなったかについてはまだ十分な情報はないが、中国医科大学を卒業した学生についても成績と申請の準備次第で予備試験を免除されていることなどは確認されている。

また、北京大学など5年制の医学部の場合、一律に予備試験を課していた点については、大学の授業時間やカリキュラムによっては、予備試験ではなく直接国試にいけるとする規制緩和があったことは報じられているとおり。

今年の国家試験についていえば、海外の大学を卒業して医師国家試験を申請した学生の中には、日本語診療能力試験という事前の面接審査で振り落とされた人も いる。また、申請書類の作成には莫大な労力や時間がかかり、とても個人だけの責任でできるものではなかったという報告や、申請についても業者の力を借りる と費用がかかったといったいった話、低学年から日本の国家試験を意識した勉強も強いられ、よほどモチベーションが高くないと卒業までたどりつくのは困難と いった話や、国によっては書類作成のために賄賂が必要があったという話も伝わってくる。

全日本民医連にも、日本の私立大学より東欧の医学部のほうが費用が安い、国立は試験科目の関係で断念せざるをえない、英語で勉強できるので将来はアメリカ で働くことができるので海外の医学部進学を考えているという相談が高校生から寄せられる。すでに医学生となった東欧の学生から家庭の事情で奨学金が必要に なったといった相談もある。

海外で学んでまでしても医師になりたいという意気込みは評価したい。しかし、冷静になって業者の宣伝に目をとおして見て欲しい。医師になって後にアメリカ に留学するのと働くのではビザの問題でもクリアすべきハードルは違うし、それはヨーロッパで働くにしても同じこと。EU共通の免許だから働きたい国で働け るわけでもないのではないか(このあたりのことに詳しい方がいればご指摘下さい)。日本と現地を往復する費用はどれくらいかかるかといったことや、進学後 に業者に毎年支払う費用はどれくらいかかるか、現地にサポートの体制は整っているのか、何人の学生が語学の壁や諸事情で脱落しているのかなど、業者が明ら かにすべき情報は多いのではないか。開示の請求に誠実に業者は応えてくれるかどうかも大切なポイントだろう。そもそも、現地で生活したり、現地の患者が英 語を話すわけでもないので、現地の言葉の習得の必要も考えると、英語だけでなく、ハンガリー語、そして日本語の医学用語や国試対策なども必要となる。も し、これから医学部を受験するのならば、日本の国公立大学をめざして受験勉強をしたほうが、(日本で医師になることを考えたら)近道だと思うのは私だけで はないだろう。ただ、日本での医師免許さえ前提としなければ、医師になる選択肢のひとつではあるのかもしれない。

いずれにしても業者の話をすべて鵜呑みにするのは避け、必要な情報開示を求め、冷静に検討したたほうが良い。

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