子育て世代の実態明らかに -民医連医師が全国調査-

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    いつでも元気 MIN-IREN
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    高校生・予備校生 医学生 初期研修医 後期研修医 医師

「いつでも元気 MIN-IREN 2019 .5」より

文・新井健治(編集部)

 

民医連小児科医師の研究班が6月、友の会や医療生協など共同組織を対象に「子育て世代実情調査」を行います。子どもの貧困率は13.9%。およそ7人に1人が貧困の中にあり、生活実態に基づいた多様な支援が必要です。調査の狙いについて、共同研究者で千鳥橋病院(福岡)小児科部長の山口英里医師に聞きました。

下記QRコードやURLからも回答できます。

https://families-research.com/

 

千鳥橋病院小児科の外来患者数は1日平均30人。病院には産婦人科(分娩数年間300件)もあるため、山口医師は出生前からさまざまな困難を抱えた家庭と関わります。「貧困だけが理由で困難に陥っているケースはむしろ少ない。障害、虐待、DV、精神疾患、外国人などさまざまな問題が複雑に絡み合っている」と指摘します。

 

なかでも多いのは、家族が何らかの障害を抱えたケース。生活保護を受給している母と子ども2人の母子家庭の乳児を診察した際、持参したおむつの中からゴキブリが出てきました。自宅を訪問すると「ゴミ屋敷」状態で、片付けができない母には軽度の知的障害があることが分かりました。病院職員が児童相談所に相談したところ「こういう(部屋が汚れた)家はいくらでもある」と最初は介入を拒まれました。

 

子どもの生命の危機を感じた山口医師は、病院職員や区の保健師とともにゴミを片付け、知的障害者が福祉サービスを受けられる療育手帳を母親に取得してもらいました。「困難を抱えた家庭は孤立しており、家族だけではどうにもならないことが多い。さまざまな働きかけを続けていかないと解決しません」と振り返ります。

 

こども食堂の全国的な広がりにみるように、子どもの貧困に対する社会の関心は高くなっています。「でも、困難を抱えた家族はますます増えている印象がある」と山口医師。「収入が基準をわずかに上回るため生活保護を利用できないなど境界線上にある人たちの状況がつかみきれていない。今回の調査で、そういう人たちの実態も明らかにできれば」と話します。

 

スマホの画面で回答

 

民医連の医師が子どもの貧困に関わる調査を行うのは今回が2回目。前回は2014年度に、入院(675件)、外来(712件)、新生児(677件)の3グループで実施、「全国的にも例を見ない調査」と専門家から注目されました。

 

調査結果を世帯収入で比較したところ、貧困世帯は非貧困世帯に比べ、受診控え(4・3倍)、中絶(3・5倍)、母親の喫煙(2・4倍)などが多いことが分かりました。

 

前回は病院や診療所の職員が家族に承諾書をもらって調査用紙に記入、作業が煩雑で集計に時間がかかりました。今回はスマートフォンを使い、回答者自身が画面上で質問に答えるので集計が容易です。また、医療機関にかかっていなくても答えられるため、より幅広い人に協力を呼びかけることができます。

 

調査対象は3歳から中学生までの子どもがいる世帯。保護者が答えるほか、小学5年生以上は子ども自身が答える調査もあります。

前回の調査は健康に関する質問が中心でしたが、今回は暮らしぶりにも焦点を当てました。子ども自身が答える項目には放課後や休日の過ごし方、悩みの相談相手など、より詳細に生活状況を記入してもらうのが特徴です。

 

既に4月に民医連の500事業所に調査の協力を呼びかけるポスターとチラシ(前ページ掲載)を送付。ポスター掲示のほか、事業所や共同組織の発行物に調査を紹介する記事を掲載したり、共同組織の機関紙などにチラシを同封してもらい、1万件を目標に集めます。

 

山口医師は「調査項目が多くて大変だが、ぜひ多くの人に協力してほしい。医療現場からデータを示すことで、子育て世代を支援する有効な政策を作っていきたい」と呼びかけます。

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