QOKI RESIDENCY VOICE COLLABORATION

“患者さんと接する医療”その中で

おばぁがまた、畑を耕せるように

― 与儀 梨香 ―

所属:沖縄民医連 沖縄協同病院 麻酔科

病気だけではなく、患者さんと接する医療がしたかった

── 最初に与儀先生が医師を目指されたきっかけはなんだったんでしょうか。

与儀:私、両親が医療関係者で、その働き方や患者さんのエピソードとか、そういうのは小さい頃からよく聞いてたりしてたので、医師の仕事自体がそうですね、何か憧れの仕事というよりは、身近な仕事だったのもあって興味がありましたね。

特にうちの母親が看護師だったんですけど、例えば末期の患者さんが亡くなるときに、病院で亡くなるんじゃなくて、家に連れて帰りたいとか、「そのためにいろいろ取り組んで、いろんな人と協力して連れて帰ったんだよ」とか、そういう話を聞いてたので。

── では、先生が沖縄協同病院で研修を始められたきっかけはなんだったんでしょうか。

与儀:そうですね。きっかけ自体は、両親が働いていたというのがあるんですけど。あとは、人と関わるような医療がしたいなっていうのがあって。やっぱり、大学の研修とかと比べて、こちらで実習を受けると、患者さんとその家族、取り巻いている状況とかそういう問題に直面することが多いイメージだったんで、病気というよりは、患者さんと接する医療がしたいなというのもあって選びましたね。

── 実際に研修されてみて、患者さんと触れ合う、身近にちゃんと感じられる研修はできているという感じですか。

与儀:そうですね。その分難しいですけどね(笑)医者っていう研修医の仕事自体が私にとってはすごい大変で、きつかったんですけど、やっぱり支えてくれる人たちがいて、自分が挫けた時に支えてくれたりする周りのスタッフの方とかみんなが温かかったので、何とか続けてますね。

チームの一員として、よりよい医療ができるように

── いま、後期研修の5年目ということですが、これから将来的にどんな医師を目指されてますでしょうか。

与儀:私、麻酔科なんですけど、麻酔をきちんとかけれるのに加えて、チーム医療を。手術室でみんなでいろいろ仕事をする上で、人間関係とかそういうのも大事にして、よりよい医療ができる人になれたらなとは思ってますね。

── 先生自身、ご両親が身近に医療関係でおられたということですが、先生が目指す医師像や夢などがあれば、お伺いしたいのですが。

与儀:もう働いてる人たち皆さんすごく尊敬する人たちばっかりなんですけど、そういう中で初心を忘れずじゃないですけど、もちろん医療の技術は磨きながら、患者さんと寄り添った医療ができるようになりたいなと思いますね。

── なるほど。「患者さんと寄り添った医療」という、先生自身が目標とされている研修がいま実際できているなという実感はありますか?

与儀:そうですね。私は麻酔科なんで、直接接する機会っていうのは他の科に比べたら少ないんですけど、麻酔の手術の説明とか、あとは患者さんの術後の訪問をするときは、ちゃんとその人の人柄とかまで分かるような会話をするようには心掛けてますね。

数字だけでは、患者さんは語れない

── 沖縄協同病院は地域医療の中核病院ということで、特に地元のご高齢の方の来院が多いですが、向き合われる中で悩みや、また自信がついた部分などはありますか。

与儀:手術をする年齢というか、大きな手術っていうのはその人に負担がかかるので、例えば100歳の人に手術をするのかどうかとか、そういう部分はすごく悩みます。

問題として、この手術は本当にしてもいいんだろうかっていうのがあるんですけど。でも、年齢だけで見たら100歳なんですけど、全然100歳みたいな感じじゃないおじいさん、おばあさんもいたりして。やっぱり数字だけの検査結果だけじゃ、その人は多分語れないんだろうなと思って。

元気に歩いて、もう畑仕事もしてる90代のおじいさん、おばあさんが骨折したら、もうやっぱり直してあげないといけないので。「また畑を耕してくださいね」って。

── 悩まれた時など、医局全体で相談できやすい雰囲気ではあるんでしょうか。

与儀:いま、医者の数も多分ちょうどいいぐらいの数なので、各科でわざわざ「先生、今お時間よろしいですか」っていう感じではなくて、「○○先生、この患者さん、こういう人がいるんですけど」「ああ、それね」みたいに気軽にコンサルトができるので。

── 独りで抱え込んでるっていう感じではなく、みんなでっていう…。

与儀:もう全くないですね。“みんなで”という感じですね。

何回も挫折しそうになりました

── これから医師を目指される方が、たくさんいらっしゃいますが、そういう方たちに与儀先生が歩んできた経験から何か一言メッセージやアドバイスがあるとすれば、どういった言葉になりますでしょうか。

与儀:私まだ5年目なんですけど、医学部出たり、研修医になったりする間にもう何回も挫折しそうになったんですけど、「ああ、この仕事は私に向いてないんじゃないか」って思ったこともあるんですけど、せっかくこの仕事に就けた、医学部に受かったり、医師になれたんだったら、あきらめずに頑張ったら力も追いついてくるので、とにかくあきらめずに頑張ってほしいなと思いますね。

── 先生自身もあきらめなかったから。

与儀:そうですね。またここから先、もしかしたら挫折するかもしれないですけども(笑)

―― 例えば先生が落ち込んだりした時に、気分転換するためにされていることってあるんでしょうか。

与儀:もう同期の人に話を聞いてもらうのが一番ですね。同期の研修医は同じ立場なので、悩みを分かってもらえるし、同期に話を聞いてもらうのがもう一番でしたね。

個人的にみんなでご飯食べに行ったりしたり。研修医は研修医室とか、そういうのがあるので、そこで悩みを聞いてみたり。「ああ、この子も悩んでるんだな」と思ったら、何かちょっと勇気が。ホッとしたり。

Message ― メッセージ ―

同期のつながりを大切に
とにかくあきらめずに頑張ってほしい

― 与儀 梨香 ―

Profile

○所属 沖縄民医連 沖縄協同病院 麻酔科
○経歴 香川大学 2007年卒
○資格 麻酔科標傍医、日本麻酔科学会認定医
○所属学会 日本麻酔科学会、日本臨床麻酔科学会