第14回臨床研修交流会

全日本民医連と医療福祉生協連との共催で「第14回臨床研修交流会」が2015年11月13日(金)- 14日(土)におこなわれました。

この交流会は全国の民医連、医療福祉生協連の事業所での医師養成の取り組みを交流して学び、初期研修・後期研修をどう発展させていくのか議論する場として、

初期研修医・後期研修医を中心に330名を超える参加者が集いました。

 

 

■スケジュール

【11月13日】

 

14:00

開会 ポスターセッション説明

14:10-16:15

ポスターセッション

16:15-16:30

休憩・移動

16:30-18:15

開会あいさつ 講師紹介

記念講演 田口智博医師  (三重大学医学部付属病院 総合診療科)

 「実践!コーチングセミナー~聴き方/訊き方次第で診療・教育・組織が変わる~」

18:15-18:30

休憩・移動

18:30-20:00

夕食交流会

 ポスターセッション優秀演題結果発表・口述発表、クイズ

   

【11月14日】

 

9:00-11:00

分科会【1回目】9:00-10:20 【休憩】10分 【2回目】10:30-11:50

11:50-12:00

休憩

12:00-12:30

 

 

 

全体会

新専門医制度について

 山田秀樹医師 (全日本民医連医師部 新専門医PJ長/立川相互病院 副院長)

まとめ 閉会あいさつ

   

 

 

■ポスターセッション

日常の診療現場における実践の報告や他職種との連携・チーム医療、また医師の確保や研修プログラムなど19のテーマをもとに58の演題がポスターセッション形式で発表されました。 

 

 

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参加者からの投票および座長協議の結果、以下の演題が表彰されました。

最優秀賞「『研修交流会』と称する会における交流の妥当性について」(京都民医連中央病院・石井慧医師)

優秀賞「耳原総合病院臨床セミナー『絶対に断ってはいけない当直二四時』」(耳原総合病院・一年目研修医)

特別賞「中堅職員を対象とした IPW現任研修の取り組み」(埼玉協同病院・小野寺由美子看護師)

特別賞「戦後七〇年~医療者として、人としてあなたにとって平和とは~」(城北病院・岩本和恵医師)

 

■記念講演

記念講演は三重大学附属病院総合診療科助教・田口智博医師をお招きし、「実践!コーチングセミナー~聴き方/訊き方次第で診療・教育・組織が変わる~」として、ティーチングとコーチングの違い、基本的なコーチングスキル、コーチングの意義などについてご講演いただきました。ロールプレイがふんだんに盛り込まれ、参加者が様々なコーチングスキルを実際に活用することで楽しみながらも新たな気づきが得られ、今後の診療や研修教育にも生かすことができる内容でした。

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■分科会

 

①腹痛の診かた(講師:耳原総合病院・外山和隆医師)

急性腹症に対する苦手意識をなくし、緊急性がある病態を列挙できるようになり、腹部CTの適応や見方をもとに病態を診断出来るようになることを主目的に、病歴を深読みし腹部所見・腹痛の内容が重要であり、症例を提示して班で相談、鑑別をあげるという流れで行われました。来院時所見と病歴で鑑別を絞っていきますが、痛みの部位を特定できるかが重要です。圧痛所見をとるのが難しく、「ここは痛いですか」と聞いていくとすべて「痛い」となるため、よく行うのは雑談をしながら所見をとると、痛い部位で会話がとまるとのことでした。圧痛があるということはそこに所見がある。そういう目で画像をみる。様々な角度からポイントを示しながらいくつかの症例をもとに講義が行われました。IMGP5571

 

②現場で役立つ!トラブル回避のコミュニケーション講座(講師:総合病院南生協病院・棚橋千里医師)

カウンセリング心理学のひとつである『交流分析』の理論を基に、ネガティブな感情を相手に起こさせにくいコミュニケーション・パターンを学びました。交流分析、交流分析の基本スタンス、4つの分析(構造分析、対話分析、ゲーム分析、脚本分析)の説明を行い、構造分析を基にエゴグラフで自我状態を自己分析のワークショップを実施しました。また対話分析(相補交流・交差交流・裏面交流)のワークショップでは、自分の陥りやすいコミュニケーション・パターン及び各人の相補交流・交差交流・裏面交流の実例を発表し合い、今後のコミュニケーション作りの参考となりました。

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③よりよい多職種連携を実践するには~円滑な連携を進めるコツを見つけよう!~

(講師:王子生協病院多職種連携委員会)

王子生協病院多職種連携委員会の紹介後、本日の獲得目標「専門職連携を自分の言葉で語る」のためのグループワークが行われました。チームを体験する「エッグフライゲーム」をおこない、チームとは何か自己の役割は何かを理解し、またポスターツアー「他職種の視点を理解する」では5つのグループに分かれ、医師、看護師、薬剤師、言語聴覚士、事務の役割と視点についてポスターを作成、発表を行いました。ここでは、それぞれの役割には背景があり、各職種の課題役割は優越ではなく「違い」であり、異文化理解能力の向上が必要である事を学びました。「振り返りで気づきや学びを言葉にする」では、このワークで学んだこと、悩み解決の第一歩として明日から職場でできることをチーム内でシェアし、「医師として他職種のことも考えて話すようにしよう。」「相手の業務を知る事、情報を収集しよう」「それぞれが業務を持っていることを改めて感じた」など、連携を円滑に進めるコツを見つけることを学びました。

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④勝てる臨床研修をつくるには?(講師:荒川生協診療所・菅野哲也医師)

「勝てる臨床研修」と題して、どこへ出しても恥ずかしくない「○○病院出身研修医」を育てることが重要で、そのためには「エンプロイメンタビリティ」(企業の雇用能力)、優秀な人材に選ばれる魅力的な企業とはいったいどういう組織であるかを考える必要があること、又、全国から多数の研修医を集めている「医療福祉生協連家庭医療学センター」「勤医協中央病院」「みちのく総合診療医学センター」などの先進事例が紹介されました。その上で「問い」として「どうしてあなたの病院には研修医が来ないのでしょう?」というテーマで、グループワークを行い。どうしたら研修医が来るようになるのか?こんな工夫をしている、などを話し合いました。

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⑤民医連における総合診療専門医養成の可能性を探る(西淀病院・大島民旗医師) 

「新専門医制度」及び「総合診療専門医」養成のプログラム整備基準などが紹介され、ワールドカフェ形式で、①「地域で求められる医師像は?」、②「民医連で養成する総合診療医について、自分たちのフィールドを生かして」の2つのテーマで意見交換しました。

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⑥フィードバックデキレジになろう

(講師:耳原総合病院・大矢亮医師、大曲診療所・藤原和成医師、王子生協病院・泉水信一郎医師、 鹿児島生協病院・中村太一医師) 

講師陣より、参加者に「効果的な教育(フィードバック)」について①フィードバックとはなにか、②なぜフィードバックが大事か、③効果的なフィードバックの方法の3点を柱にレクチャーしロールプレイで学習しました。70歳女性がショックで搬送されてきた事例等について検討し、フィードバックのポイント(①目的、②環境、③スキル)やレベル(①人間ビデオカメラ、②アイメッセージ、③予測される事態を述べる)等の手法について深めました。各研修医より「フィードバックされる側の心構えも大切だ」、「フィードバックのレベルを上げていくきっかけが難しい、その基準はあるのか」、「このようにフィードバックされるのであれば毎日でもやりたい」等意見や感想が出されました。

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⑦Milestones(講師:勤医協札幌病院・尾形和泰医師) 

マイルストーン作成のワークショップ。カリキュラムプランニング(目標、方略、評価)での歴史的経過からACGMEのマイルストーンの導入、実際に作成されているシートの解説がありました。「生活と労働の場から学ぶ視点を身につける」「研修担当事務のスキルアップ」などのテーマを決めてマイルストーンのワークシートを完成させるグループワークを行いました。

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⑧具体的な目標設定のスキル(講師:勤医協札幌病院・尾形和泰医師) 

目標を設定するための講義と、研修目標を設定し研修医に説明するロールプレイを行いました。指導医講習会の内容と関連させて、なぜ目標を設定するのか、教育目標の分類や目標の要素、学習の方略・計画、評価について講義を受け、自院で研修分野を作成する作業を行いました。

 

 

⑨臨床推論ドクターG(新居浜協立病院・谷本浩二医師)

症例提示(無保険60代男性、体が痛くて動けない)があり、谷本医師が参加者全員から鑑別診断を挙げていくスタイルで進行し、途中診断に有効な身体診察や検査、治療のガイドラインなどレクチャーをはさみながら、参加者が各々考えながらディスカッションが活発に行われました。

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■全体会・新専門医制度について(立川相互病院・山田秀樹医師)

新専門医制度の概要、制度開始の背景、初期研修制度と専門医制度の違いなど確認すべきことや対応について報告されました。新専門医制度に対する民医連の見解についても、制度上の懸念材料の整理や資格を診療報酬とリンクさせないこと、新専門医制度を法制化しないことなど運動の方向性、地域医療を担う医師体制をめぐる諸問題、基幹施設を現行と乖離させず、地域医療を担う専門医を地域で養成可能な制度設計にすることなど要望として、最後に、参加者の皆さんに考えていただきたいこととして、専門医への最短の道は最善の道なのかということ、専門科ではなく「めざす医師像」をもう一度確認してほしいと語られました。

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