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原発被災者に寄り添いながら、医師としての第一歩を福島で歩み出しませんか? 医学生のみなさんに呼びかけます

 

原発被災者に寄り添いながら、医師としての第一歩を福島で歩み出しませんか?

医学生のみなさんに呼びかけます

2012 年6 月7 日

全日本民主医療機関連合会
事務局長 長瀬 文雄

2011年3月11日の大震災とそれに続く原発事故から1年以上が経過しました。東京電力が起こした原発

事故は収束しておらず、福島では、16万人が県外避難を余儀なくされるなど、いまなお多くの困難が山積して
います。
 日々、健康不安の中で暮らす地域住民に対し、医療機関や医療者が寄り添い、いのちと健康を守り抜く役割が
今こそ、求められている時はありません。
 しかし、福島県内の医師は被災後約1年を経過した時点で、138の病院から71人の医師が流出したとされ、
深刻な医師不足を引き起こしています。看護師など他の医療職も同様です。福島県立医科大学の昨年度のマッチ
者は14人にとどまり、福島市内の大学病院以外の臨床研修病院でこの4月に研修を開始したのはわずか1人、
県北地域に広げても2人にすぎません。住民にとって最も必要とされる医療機関の医師や医療従事者の流出によ
り、深刻な医療崩壊がすすんでいます。
 だからこそ、住民に寄り添い、健康管理や健康に住み続けられる権利、健康権を守る取り組みを強めることが
求められています。それは医療者としての社会的使命と考えます。
 民医連は福島に基幹型臨床研修病院の医療生協わたり病院(福島市)をはじめ桑野協立病院(郡山)、小名浜
生協病院(いわき市)、その他に診療所、介護事業所などをもっています。これらの事業所は「地域とともに歩
む専門職」としてこれまでも活動を続けてきましたが、原発事故後は、とりわけ健康不安の中での生活を余儀な
くされている地域住民の中に入り、汚染マップづくりや徹底した除染活動の推進、さらには健康に暮らすために
食品検査や生活指導、住民向け学習会の開催、健康相談や健康診断など、「この場所で住み続けたい」という住
民の立場にたって医療・介護や生活支援を行っています。また強制避難地域である相双地域から福島市内などに
避難された被災者への継続的支援、国や東電、県に対する要望や提言なども行っています。
 こうした活動を行う医師をはじめとする職員も被災者であり、全日本民医連はこうした福島で働く仲間に連帯
し、いま全国から医師や看護師派遣などの支援、さらには職員や家族を招待したリフレッシュ企画など多彩な取
り組みを続けています。

わたり病院は、規模こそ大きくありませんが、これまで、地域に密着した医療を行い、職種間の壁もなく、研

修医を丁寧にサポートし、総合的な診療力量を持った研修修了者を生み出してきました。医師としての基本的な
姿勢や能力を身につけるには最適の病院だと確信します。特に、被災地のど真ん中で、「いのちと健康」を守る
ことを中心に医療活動に取り組んでいる医療生協わたり病院での研修は、医師人生のスタートを切るに最適な場
所だと考えます。全日本民医連としても、医療生協わたり病院での研修を行う方には全国の英知を集めて全力で
サポートしたいと思います。

みなさんの中から、福島で、医療生協わたり病院で、原発事故の被災者に寄り添いながら歩み出そうという研

修医が生まれてくることに、強く期待し、研修参加を呼びかけます。

医学生のみなさんへ

2012 年6 月7 日

福島県民主医療機関連合会
会 長 松本 純

私たち福島県民主医療機関連合会(福島県民医連)は4 病院5 診療所と介護・福祉の事業所とで構成している

団体です。私たちの医療は地域住民によって支えられており、まちづくりの運動と共に歩んで行くことを特徴と
しています。日常の外来や入院医療とともに健康管理や在宅医療・高齢者の施設での医療や福祉の活動といった
分野にも幅広く取り組んでいます。
 その医療活動を先頭に立って進めていくのは医師たちです。私たち医師もまた患者さんとともに、地域の住民
とともに学び、成長していくことが大切であると考えて長年、卒年次からの医師研修・養成を重視してきました。
2004 年に新臨床研修制度がスタートした当初から医療生協わたり病院は基幹型臨床研修病院として認可を受
けています。臨床の現場では医局の指導医たちがカリキュラムに基づいて研修を行いますが、病院管理部や看護
部をはじめとして病院職員が一体となって研修医を受け入れています。そのことは卒後臨床研修評価機構におい
ても高い評価を受けています。

また、医療生協わたり病院の他にふれあいクリニックさくらみずと生協いいの診療所でも地域医療研修カリキ

ュラムに基づく研修の受け入れを行っています。その他に郡山医療生協の桑野協立病院、浜通り医療生協の小名
浜生協病院そして会津医療生協の医療生協会津若松診療所と医療生協きたかた診療所、さらにはわたり福祉会や
くわの福祉会、プランタン薬局など、「保健・医療・介護の複合体」として事業を行い、地域に密着した活動を
行っています。

2011 年3 月11 日の東日本大震災、それに伴う原発事故によって福島県は大きな災難に直面することとなりま

した。しかし福島県が復興・再生していくためには私たち医療人に大きな期待がかかっています。民医連はすべ
ての都道府県にあり、全国の民医連の仲間も福島県民医連のさらなる発展を願って連帯・支援を展開しています。
私たちは医療生協わたり病院での研修医を迎え成功することにより住民本位の福島県の復興と日本の再生を成
しとげたいと願っています。

医師としての第一歩を私たちとともに、被災者に寄り添いながら歩んでいこうではありませんか。

 医療生協わたり病院での研修に少しでも関心をお持ちいただける方は是非実際の現場を見学にいらしてくだ
さい。心より歓迎いたします。

掲載日:2012年6月11日/更新日:2012年6月11日

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