民医連の後期研修

「総合性を専門として高い力量を持つ家族医・総合医」と「総合的基礎力を備えた専門医」

1.これからのわが国に必要な医師像の大きな方向

現在の日本が目前にしているのは「超高齢社会」「悪性疾患をふくむ慢性疾患の着実な増加」であり、また直面しているのは、子どもから高齢者までを覆う「貧困と格差、健康格差社会」と医師不足に端的に示される医療崩壊の危機です。そういう状況で求められる医療活動として、わたしたちは、別掲のような重点課題を位置づけました。

この「健康格差社会」に挑み、「超高齢社会」に備える保健予防活動、医療活動を担う、地域医療のプロフェッショナルはどのような医師像でしょうか。私たちは、その医師像として「総合性を自らの専門として高い力量を持つ家庭医・総合医」と「総合的基礎力を備えた専門医」の2つを目指すこととしました。

2.すべての医師に基本として脈打つ総合性

私たちが養成する医師に共通する「総合性」は、以下のようなものと考えています。

●患者をそのライフステージ、生活と労働の実態の中で全人的に把握すること

●地域で、患者中心の医療、プライマリ・ケアを実践できる基本的な診療能力

●コメディカルスタッフが生き生きと力を発揮できるチーム医療を推進する力

●基本的人権の擁護をする立場

●健康な地域づくりに協同的に参画する行動

●みずから振り返り成長できる力

臓器だけを診療して自分の実力ひとつで疾患に立ち向かう、という医師像の必要性を否定するものではありませんが、これからの時代に私たちが目指すのは、上記のような総合性が脈打つ「家庭医・総合医」と「専門医」なのです。

 

地域医療のあらゆるシーンでの研修

●センター病院
各科専門病棟、総合内科病棟での診療が行われており、そこでは専門診療科プログラムでの研修や、初期研修で不十分だった分野をローテートする研修、総合内科病棟での診療のみでなく医師教育にもかかわる研修などが行われています。

●中小病院
多くの病院では総合内科として展開しています。あらゆる分野の問題がはだしで飛び込んでくる、まさに地域の"なま"の総合診療がそこにあります。主体者として問題解決をはかる実践が繰り返され、本当の実践力がついていきます。サブスペシャルティをもった総合医も多く、そこでの学びの大きさ、深さには定評があります。病院という組織全体を学ぶことも大きな財産です。

●診療所
地域に密着した医療と福祉、健康増進活動の総合センターです。プライマリ・ケアの実践、地域の健康増進活動、職員全体の奏でるチーム医療のリーダーとしての経験、経営をふくめた管理運営の学びなど、貴重な経験が待っています。

●外来研修
日常の健康問題の大半に接することができます。幅広い疾患を継続的に診療し、より高いレベルでの総合的な問題解決能力を身につけます。

●在宅診療
患者さんの生活の場での医学管理と日常生活に寄り添い支える医療を学びます。本人、家族と一緒にいきいきとした生と納得の死を考えみつめていく貴重な場で多くを学びます。

民医連のスケールメリットを活かした研修

全国の民医連のネットワークの中で研修を組み立てることができます。総合性を磨く研修でも、専門技術研修でも、資格取得の取り組みでも、協力し合ってプログラムを準備しています。また、必要に応じて民医連外の専門医療機関とも積極的に研修を組み合わせ、単独では困難な専門医の取得も旺盛に行っています。

専門分野では全国ネットワークの研究会も多くあり、そのなかで研究会を開催、全国規模の研究も取り組んでいます。

地方ごと、県ごとの研修の交流もさかんで、交流会、研修セミナー、症例検討会、指導医養成など行い、内部の実力ある講師、外部の魅力的な講師を招いて学んでいます。

民医連で一緒に学び、地域に働きかけよう

広がる健康格差をほうっておくわけにはいきませんし、超高齢社会と悪性疾患をはじめとする慢性疾患の増大にただ漫然と待機することもできません。

私たちの目の前の地域住民、隣人たちと一緒に、一人ひとりの医療/福祉へのアクセスが保障され、人として大切にされながら生涯を全うしていける医療・介護・福祉のネットワークづくりを始めませんか。地域住民と共同して健康格差を乗り越え、未来予想図を変えていくために私たち民医連で学んでみませんか。

本当に必要とされるこれからの地域医療の担い手を大募集しています。

民医連の今日的な医療福祉活動の「3つの視点」とそれにもとづく「8つの重点課題」

●3つの視点
第1に、貧困と健康格差を可視化し立ち向かう視点
第2に、超高齢社会の疾病動向に対応するとともに健やかな子どもの成長に寄与する視点
第3に、医療安全と総合的な医療の質向上をめざす視点
 

●8つの重点課題
①健康格差を克服するヘルスプロモーション・保健予防活動
②がん医療を含む慢性疾患医療の強化・発展
③地域ぐるみの救急医療の実践とネットワーク構築
④安心して子どもを産み育てられる社会の実現と「子どもの貧困」に立ち向かう運動と実践
リハビリテーション医療の新たな展開
⑥介護、居住施設と結びついた在宅医療の新たな展開⑦チーム医療の実践と発展
地域医療の連携の構築・発展と病院・診療所の役割

3.総合的基礎力を備えた専門医へ

「○○科のなかの□□疾患しか診ません」という専門医では地域医療の現場で十分に力を発揮することは困難です。「自分の専門領域の診療が済んだ」時点でも患者さんや家族の抱える問題が十分には解決されていないことも珍しくありません。専門家であっても担当している患者さんに生じたコモンな健康問題や疾病にある程度まで適切な対応ができる力を身につけていることが必要とされます。

そして地域医療では、患者、家族の抱える問題点を医療チームでみつけ医療チームで解決することをコーディネートする視点をもった専門家が必要ですし、また、この地域にどんな専門家がいれば地域の診療のレベルが上がるのかという視野を持つことが必要です。

民医連では、要求される確かな専門医療水準を確保、発展させることは当然の前提としています。その上で、後期研修で、専門医だからいきなり専門のトレーニングだけを積めばいいと考えるのではなく、基盤となる総合力を常に意識して、専門病棟や検査室や手術室だけでないもっと広いフィールドも学びの場とします。また、医師のみから学ぶのではなく、多職種の中で成長することを重視しているのも大切な特徴です。