バランスの良い研修にひかれて立川相互病院を選択
── 立川相互病院での研修を選ばれた理由を教えてください。
増澤:私は初期研修と後期研修、どちらもこの立川相互病院で取り組んでいます。現在は後期研修3年目に入りました。大学が近くにあり、勧誘も行われていたのでこの病院のことは知っていました。研修内容がとてもバランスが良く、実践とアカデミックどちらにも偏らないでできるのが魅力だと感じます。
それに、暇がありすぎるようなところだと勉強にならないし、毎日忙殺される状態では十分な学びができず自分のためになりません。
そういう意味でも立川相互病院は適度な忙しさがあり、より良い研修ができるところだと感じます。
―医師はどのようなきっかけで目指されたのでしょうか?
増澤:自分が怪我をした経験や、自分の家族も病院にかかったことも興味のきっかけで、医療現場の様子を見て憧れを抱きました。
中学生の頃に医師になる方向性を定めたと思います。親も医療現場で働いていましたし、身近な世界でしたね。民医連のことも知っていました。
―民医連の病院のあり方や医療の考え方についてはどう感じていらっしゃいますか?
増澤:他の病院では診てくれないような患者さんを診るのは、いいところです。縦割りではなく科同士の横のつながりがあるので、違う科の病気でも診療しますし。
逆に言えば日本の医療システムに問題があって、それをカバーしていると言えます。
―後期研修では整形外科を選択されましたね。
増澤:自分も骨折をしたことがありますが、見学で手術を見てやってみたいと思いました。いろんな機械を使って骨に穴を開けたり、金具で留めたりということをしますが、そういう手技が純粋に面白いと感じました。整形外科は非常に直感的なところがあります。
まず症状が見て分かります。内科は症状がすぐ分からず、症状や検査の結果から推測するしかないのですが、整形外科のわかりやすいところは自分には魅力でした。
骨折は治療の結果がしっかり目で見える形で出るのも良いところだと思います。
―後期研修から専門的なことを学ぶ訳ですが、どういうところから学びはじめるのですか?
増澤:整形外科の手術では老人の大腿骨骨折が多いのですが、そこからスタートすることが多いですね。
教科書はありますが、患者さんによって症状や状態はさまざま。教科書の教えがそのまま使える訳ではないので、上の先生に相談して指導を受けながら手技も覚えていきます。
―こちらの病院を研修のバランスの良さで選んだとおっしゃいましたが、それは外科もそうなのでしょうか。
増澤:初期研修はその色が濃いです。
しかしアカデミックなことは自分で学ばないといけないので、何でも学校にいるように教えてもらえる訳ではありません。指導も受けますが自分で学ぶ要素も大きいです。
今も常に仕事の合間に自主的に学び、実践していく形です。
―病院での1日の動きを教えていただけますか?
増澤:外来がある日は、午前中にその対応を行います。20~30人ほどでしょうか。午後は入院中の患者さんを診ます。そのほか、手術のある日は1日中手術をしていることが多いですね。手術は多いと1日3件くらいです。
一人で任された手術を無事成し遂げて感じた手応え
―ここまでの研修で自分が最も成長できたと感じた瞬間はいつですか?
増澤:上司の先生の手を借りずに、自分一人で骨折の手術を行えたことでしょうか。
後期研修に入って1年半ぐらい経った頃、「一人でやってみて」と言われましたが、問題なくできたことですね。いつから一人で任せるかは指導医次第ですが、もう自分でもできるだろう、と思っていた時期でもあったし、普通に対応できました。
―整形外科の手術の難しさとは?
増澤:やはり予期せぬことが起こることでしょうね。例えば多い事例ではありませんが修復の途中で他のところが折れてしまうようなこともあります。そうした場合は手術の難易度も上がります。途中で手術を放棄することはできないですから、そこは大変でもあります。逆にうまくいけば嬉しいです。
―治療にあたって大事にしていることは何でしょうか。
増澤:計画をきちんと立てて、さまざまなことを予想した上で臨むということでしょうか。高齢の患者さんはほかの疾患を持っていることも多いので、注意が必要です。そうした疾患がほかの治療に影響を与えることもあるので、狭い範囲で考えたり治療を終えたりしないよう、幅広く目を通しておくことを心がけています。
その過程で自分の手に負えないような疾患や症状が出てくれば他の科を頼っていきます。自分でも対応可能な場合はいいのですが、専門ではない病気で無駄に粘っても良くないので、そこは判断して専門の科にお願いします。
民医連ではない大病院では書類を書いて、それを上の先生が統括してから、と手間がかかったりしますが、ここは書類を書きますが直接お願いする先生に話をすることができます。
そういうスムーズで垣根の低いところはありがたいですね。
―仕事上で大変だと感じるときはありますか?
増澤:治しにくい難しい骨折はやはり大変ですね。あとは診療報酬の仕組みが変わったりして病院としては損益の問題が大きく、急性期病院に患者さんが長居しづらくなってきています。
若い人は直ったらすぐ帰れるのでいいのですが、高齢者だと帰る先がなかったり、家族がいなかったりして、そうした人の次の行き先をどう見つけていくかという課題にも日々直面しています。
本来はソーシャルワーカーの仕事ですが、私も少し関わりますし、医師としての仕事(=治療)以外のこともやらなければならないのは大変なところもあります。
外来に関して言えば、患者さんは腰痛や肩痛などが多く、長年の蓄積で症状が出ていることも多いので、治すのに根気が必要です。
それに、高齢だと治らないことも多いで、それをいかに患者さんに納得してもらうかですね。中には治すことができず、悪くならないようにするしかない病気もある。その場合は薬をどう使うか等、いかに線引して治療にあたるかはずっと続く課題です。
秀でたものも必要。しかし、幅広くこなせることも大事に
―後期研修を今年で終えられる訳ですが。
増澤:それ以降は自立してひとりの医師として扱われることになります。
今もほぼ自立に近い状態ですが、独り立ちすれば今までのように甘えられなくなります。
―どのような医師になりたいのか、医師像がありましたらお聞かせください。
増澤:医師としては一通りのことをそつなくこなせるようになることですね。ものすごく秀でたものを持っている人はいて、私もそれを求められている部分もありますが、全体的に必要なことを外さずに治療できるような医師になるのが理想です。野球のイチロー選手のような存在ですね。ホームランバッターではないけれど、常に安定して活躍できるような。
―そのために身につけていきたい部分はありますか?
増澤:全体の患者数から考えても怪我というのは数が多いんです。だから外傷を重点的にやっていきたいですね。
当院だとなかなか診られない開放骨折など、重症の骨折なんかも診たいですね。研修終了後もここに勤める予定ですが、いずれは外に出て重症患者も診て、さまざまな経験を積んでみたいと思っています。
―冒頭でも少し触れましたが、民医連で働く魅力を教えてください。
増澤:患者さんに優しい医師になれますね。医学だけで疾患を治すことはできますが、学問だけで片付けてしまうとどこかで見落としも起こりがちです。
民医連の医師はそうしたドライさはなく、親身に接しています。時代が民医連のような対応を許さない制度やシステムにもなってきているのは悲しいことですが、大事にしていかなければならないと思います。
―初期研修を目指す方にアドバイスをお願いします。
増澤:自分の考えを持って積極的に臨めば充実した研修になると思います。私は最初から整形外科をやるつもりだったので迷いはありませんでしたが、初期研修について言うと、私のように目標があればその反対にあまり興味のない科もできてしまいます。しかし初期研修は全体をまんべんなく学ばなければならないので、忍耐強く取り組んで欲しいと思います。
Profile
○所属 東京民医連 立川相互病院 整形外科
所属
○経歴 杏林大学医学部医学科卒。
2011年4月より東京民医連の立川相互病院にて初期研修を開始し、各科をローテート。
2013年4月より同病院の整形外科を選択し、後期研修を開始。