慣れないことが多くつまずいてばかりでした。
現在、川久保病院で研修をしています。初期研修は埼玉協同病院でお世話になり修了しました。初期研修が始まった頃は慣れないことが多く、つまずいてばかりでした。もともと積極的な性格でなかったため、患者さんの心情・病態にどこからアプローチしたら良いのか、退院を目標にどのように段階を踏んでいけば良いのかなど、悩むことが多々ありました。
研修の中で、地域の特徴を直につかむことが出来ました。
そんな中で2011年7月の1ヶ月間ユニークな地域医療研修を行いました。通例であれば、診療所で外来や往診を経験するのですが、私の場合は出身である岩手の川久保病院がある盛岡市・津志田地域で「地域診断」を行いました。地域診断とは、対象の地域を疾患だけでなく、町内会活動や購買活動、職業、人口統計など生活面、行政的側面から総合的に診ていき、施策の提起と実践、評価まで行うというものです(但し、今回の研修では提起まで)。
この間、私は白衣を着ることなく、病棟や外来で患者さんを診ることもなく、病院近隣地域の人口統計や犯罪発生件数を調べ、地域を歩いて、あらゆる施設の分布や交通事情を見て回り、実際に住民の方、地区担当の保健師さんやコミュニティーの場となっている老人福祉施設を訪問しました。限られた期間の中ではありましたが、研修の中で、地域の特徴を直につかむことが出来ました。
患者と地域に役立つ医療こそ、民医連の使命。(診察中の中島先生)
医師として、ひとつ広い視野をもって患者さんと接することができるようになりました。
地域診断を行うまでは、この地域は若年層が比較的多く、医療機関、購買施設も大型店舗を中心に十分で、自分としては住みやすい町だと思っていました。実際は若年層の出入りが激しく、定住している一人暮らしの高齢者などにとっては住みづらい点が多く、同じ地域内でも大きな道路一本隔てただけで個々のライフスタイルに大きな影響があったり、コミュニティーの観点からも退職世代(特に男性)を地域交流の場にどう繋げていくかという課題があることがわかりました。それら全てが地域全体の健康問題にも深く関わっているであろうことをみてとることができました。
それ以上にこの研修で得られたことは、「疾患そのものだけではなく、住民の皆さんを診ていかなければならない」ということでした。普段病院で、受診に来る人や入院患者さんばかり診ていると、その方が普段どんな暮らしをしていて、体調が良いときはどんな方なのかを考えていない自分に気が付きました。そうすると、受診された患者さんについて「もっと知りたい」という意識が芽生えてきます。医師として、ひとつ広い視野をもって患者さんと接することができるようになりました。
住民の皆さんの健康を考えることの出来る医師を目指していきたいと思います。
今回は1ヵ月間の地域医療研修についてお話をしましたが、日常的に地域の中により深く踏み込んでこそ、地域医療をより実感できるのではないかと思います。また、臨床研修で主体的に患者さんに向き合い、診断・治療していくことは、患者さんはもちろん、自分自身の医師としての成長のためでもあります。だからこそ、ノウハウやスキルだけでなく、主体的に患者さんに向き合おうとする姿勢が研修の充実につながります。
ノウハウだけでなく、よりアカデミックな臨床研修をしていけるように取り組んでいきたいと思います。
自分自身が成長していかなければ示しは付きませんが、本当の意味での主体的で、住民の皆さんの健康を考えることの出来る医師を目指していきたいと思います。
Message ― メッセージ ―
病気に向きあうのではなく、患者さんに向き合う姿勢が大事
― 中島 昌典 ―
Profile
2010年3月に埼玉医科大学医学部卒業。2010年4月より埼玉協同病院で初期研修医を務める。2013年4月より岩手・川久保病院にて研修開始。
○趣味:音楽鑑賞、映画鑑賞
○医学生へ一言:埼玉もしくは岩手で一緒に働いてみませんか。そして良い研修・良い職場を作っていきましょう。