民医連の医師研修方針 Ver.1.9
~民医連の初期研修から、Transitional Year研修までを展望して~

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民医連の医師研修方針 Ver.1.9
~民医連の初期研修から、Transitional Year研修までを展望して~

はじめに

本文書は、民医連の医師研修の到達や日本の医師研修システムの変遷を振り返り、貧困・格差の進展や超高齢社会に対応して国民が求める医師を養成するための方針を議論して、2020年に予定されている初期研修制度の大幅な見直しに向けて研修プログラムの整備を促進すること、あわせて全日本民医連総会方針の「医療介護活動の2つの柱」の実践、健康の社会的決定要因(SDH)やいわゆる社会的処方・アドボカシーなどの取り組みを各研修プログラムに反映する議論などを促進するために作成しました。

具体的な取り組み・先進事例はGood Practiceとしてまとめ、共有するためにリンク先なども使いやすいように積み重ねていく予定です。

現在、研修医自身はキャリアプランや新専門医制度に目が向きがちですが、この間のHPH(Health Promoting Hospitals and Health Services)に関連する活動やWHOにおける新しいIPCHS(integrated people-centred health services)の枠組みや、NCD(非感染性疾患)、PHC(primary health care)、UHC(universal health coverage)に関する議論などをみても、現代の世界で求められる医師の資質・能力(コンピテンシー)と民医連の目指す医師像とでは多くの面で共通しているとも言えます。私たちは、民医連でこそ世界の最先端レベルで医師のコンピテンシーを研修できるという自負と目標を持って研修プログラムを整備していきたいと考えます。

一方で、2004年からの初期研修制度の必修化以降、民医連らしさという点での研修内容や研修の質の低下(停滞)があるのではという議論もあります。研修病院のレベルで「少し上」のクラスで満足している可能性はないでしょうか?私たち民医連の医師が何を大切にし、どのような集団を目指すのか、誰に引き継ぐのかという議論と並行して、医師研修の議論を深め、実践していきたいと考えます。

本文書は、全日本民医連研修委員会を中心に議論し、2019年6月に行われる全日本民医連研修委員長・プログラム責任者会議などで議論し、その後も各論部分は定期的にバージョンアップしていきます。

民医連の医師研修の歴史と到達
民医連の研修整備・発展(新医師臨床研修制度[必修化]より前)

民医連では研修の課題を第一線医療の充実の課題と結びつけ、地域や患者の医療要求に応えることを出発点として研鑽を深め、さらに医療技術の発展をめざし、院外研修も行うと同時に、学んだ技術・知識を病院、地域や利用者に返すことで、地域の医療水準の向上に努めてきました。 1

人権を守る基本的、総合的な診療能力(主治医能力)を獲得するために、疾病を労働と生活の場から捉えることを重視し、その中で医療の社会性を学び(SDH)、最近注目されているアドボカシー活動とも言える、医療制度を改善する活動にも実践的に関わる機会がありました。

医学生や研修医の学ぶ要求にも向き合い、協力・共同して研修制度の改善に取り組みました(専門医法制化反対・保険医インターン反対の運動・研修必修化における身分、経済保障などの議論)。

民医連では基礎研修プログラムを独自に研究し、研修条件を整備するとともに、青年医師の会など研修医自身が主体者として研修を改善する力となってきました。主に大学病院の医局中心に行われていたストレート研修に対し、ローテーション研修や小規模病院や診療所での研修を整備し、多職種協働(民主的集団医療については、1970年代の半ばから医師の役割について論じられており、1980年には「民主的集団医療における医師集団(医局)の役割について」という文書をまとめています)や共同のいとなみという視点も重視しました。全日本や地協(地方協議会:ブロック)のスケールメリットも活かして研修を支え合い、研修受け入れや研修に関する支援を行いました。 2

しかし、当時は研修指導体制が十分に整備されず、研修医の自ら学ぶ姿勢に依拠していた面や、研修目標・方略・評価などカリキュラムとしての整備が不十分な面もありました。実際に日本で研修カリキュラムについて論じられるようになったのは1975年前後で、日野原重明氏らが1973年にオーストラリアで開かれたWHOのワークショップに参加し、日本医学教育学会がWHOの後援で「指導医のためのワークショップ」を1974年12月に始めています(現在のいわゆる「富士研ワークショップ」で、医療研修推進財団の指導医講習会を経て、現在の厚生労働省が指針で定める指導医講習会に繋がっています)。日本全体として医師の卒後研修に関して議論が開始されていた時期に並行して民医連の研修も先駆的に整備・発展してきたとも言えます。
  • *1 民医連における医師の受け入れと研修の新たな発展のために三たび訴える(1981年)
  • *2 民医連の医師集団は何を目指すのか~21世紀の民医連運動を切り開くために(1998年)民医連基礎研修の課題と展望(1999年)
新医師臨床研修制度導入と制度開始以後の15年間

1994年頃からの旧臨床研修制度の議論(保険医インターン制)への批判・反対運動(医学生運動との協力・共同)の拡がりを受けて、必修化に絞った国の検討会やそれを受けた国会議論などがあり、研修医の身分や経済保障が獲得されてきました(2000年、医師法・医療法改正、参議院国民福祉委員会附帯決議)。民医連ではこの厚生労働省の研修制度改革の検討に、平行してプログラム整備を行ってきました。いくつかの臨床研修病院では総合診療病棟を新たに開設、研修担当事務を配置するなど研修環境の整備を行い、指定基準の緩和もあり積極的に研修病院指定を目指し、最大58の基幹型臨床研修病院となっていました。2004年の新医師臨床研修制度開始時は200名を超える研修医が民医連での初期研修を選択しました。

この時期にEBMの導入、ACLS/BLSや感染症診療分野などで標準的な医療への整備が進められました。15年を経過した現在、遅れている分野がないのかなど、全国や地協の力も借りて点検し見直していくことも求められます。

2010年の研修制度改定では、中小規模病院への不当な攻撃がありましたが(いわゆる「アンダー3000問題」)、厚生労働省の訪問調査にも全国の連携で対応し、基幹型研修病院を維持しました。また、必修診療科が減るなど研修プログラムの弾力化がありましたが、プライマリケア能力の習得などの基本理念を堅持して、多くの研修病院で2004年の初期研修制度スタート時のローテーション科を維持し、外来研修などは必修化以前からの取り組みを継続・発展させ、JCEP(卒後臨床研修評価機構)の調査項目にも取り入れられるなどしました。

初期研修制度改定と新専門医制度
新専門医制度との関係
  • ●初期臨床研修から専門研修へ
  • ●3年目研修のあり方とキャリアプラン

専門医のあり方検討会の報告書(2013年4月)などを経て、2014年から日本専門医機構が設立されましたが、地域医療に対する影響など様々な懸念と各ステークホルダーの思惑があり、専門医機構執行部の入れ替えなどが起き、2018年4月から1年遅れで開始されました。

しかし、多くの専門分野で市中病院での基幹施設申請が困難になり、総合診療専門医のプログラム申請では、専門医機構副理事長の不当な介入でいくつかのプログラムが審査で落とされる等の異常な事態が起きました。全日本民医連では2015年1月の「見解1」、2016年11月の「提案2」、2017年11月の「質問3」などを出して対応してきました。2017年9月には「新専門医制度開始にあたって」を出し、「必修ではない」新専門医制度に初年度から参入しないで、それぞれの研修到達や将来像にあった3年目の後期研修も援助することも提案しました(Transitional Year研修)。

各病院・県連単位で後期研修委員会を設置して、専門研修プログラムの整備、連携研修施設との調整、専攻医の募集・キャリア形成援助などの取り組みを強めることが必要です。全日本民医連・地協での連携も引き続き検討します。また、後期研修(専門研修)からの民医連へ合流する医師への対応なども課題になります。

新専門医制度を中心とした後期研修に関する方針については情勢の変化や現時点においても専門医機構や関係する医学会などの様々な問題があり、この医師研修方針とは切り離して検討、全国での共有を図っていきたいと考えています。

新専門医制度に関して大切だと思われる対策は以下の通りです。

  • 1)医学生、初期研修医の時期を通じて、民医連と事業所の存在意義への共感、そこでの自己成長、キャリア形成の道筋・プランへの展望、当事者意識を形成すること。
  • 2)実効性と魅力あるTransitional Year研修を準備し、初期研修後の1年間じっくり上記1)を形成する時間を作る選択肢をもつこと。
  • 3)基幹型プログラムをとれるところ、連携施設になれるところは積極的に準備する。連携施設となるプログラムは大学など基幹型施設との関係で「民医連での研修期間」を確保するスケジュールを追求し、その修練期間において「民医連医師としての成長」を実践上のアウトカムとして位置づける。
  • 4)「いったん離れること」は新しいつながりや、新しい技術・文化を取り入れるチャンスと位置づけ、「当該分野での技術がその地域の民医連医療にどう生かされるのか」を専攻医となる医師ともよく話し合い、県連・事業所の診療レベルの発展につなげる意義を医師集団で確認する。
  • 5)後期研修・専門医研修を担当する事務局を配置し、担当医師と共に、プログラムのプロモーション・ブラッシュアップと専攻医の確保、研修にかかわる実務、専攻医のフォローや定期的面談などを着実に行う。
  • *1「新専門医制度に関する全日本民医連の見解」
  • *2「国民本位の良質な専門医制度のために-新専門医制度の現局面における提案」
  • *3「総合診療専門医プログラムの認定作業過程に関する質問」
2020年の初期研修制度改定
  • ●2020年改定への対応
  • ●マイルストーンの積極的活用

2020年は今までにない初期研修制度の大きな見直しとなります。改定への医道審議会医師分科会医師臨床研修部会での議論では、専門学会や大学病院側からは、初期研修期間の短縮やプライマリケア研修を否定するような意見がありましたが、現在の卒前の参加型実習や医師国家試験を挟む現在の卒前・卒後の流れの中では十分ではなく、ワーキンググループの議論なども経て、基本理念や基本的な診療能力などは大きく変更しないこととなしました。2010年に選択必修科になった外科・産婦人科・小児科・精神科が必修診療科に戻り、一般外来研修・在宅研修が必修になります。

今までは経験すべき症例や症候などをチェックしてレポートを提出するいわゆる履修型のカリキュラムでしたが、基本的なコンピテンシー(資質・能力)の概念が取り入れられ、不十分ではあるもののコンピテンシー基盤型(アウトカム基盤型)のカリキュラムを目指しています。卒前のコアカリキュラムと連動した研修到達目標には、プロフェッショナリズムとして4項目、資質・能力として9項目、基本的診療業務EPA(遂行可能業務:entrustable professional activity)が取り入れられます。今後も行われていく卒前・卒後の医学教育改革を先取りする取り組みも研究していきます。研修評価では360度評価やマイルストーンも取り入れられます。

全日本民医連では、数年前からマイルストーンプロジェクトを立ち上げて、研修委員会を中心に、米国ACGME(Accreditation Council for Graduate Medical Education)のマイルストーンについての研究を進め、いくつかのマイルストーン表の翻訳や総合診療専門医のコンピテンシーなどへの適用を検討し、2017年9月には米国ACGMEとマイルストーンガイドブック2016といくつかの邦訳したマイルストーン表のライセンス契約を結んでいます。

大学をはじめ、多くの臨床研修病院や指導医層が新専門医制度への対応に追われ、また初期研修を単なる通過過程と軽視する風潮の中、今こそ初期研修を重視してさらなる研修の充実を目指して準備を進めましょう。さらに私たちが進める研修の取り組みは、今回、一般外来研修・在宅医療研修や院内委員会への参加が必修化されたように、これからも日本の医師研修の標準を作ることにつながっていくものと思います。

コンピテンシー基盤型医学教育とアウトカム像
研修目標の新しい考え方(コンピテンシー基盤型)について
  • ●プロセス基盤型からコンピテンシー(アウトカム)基盤型へ
  • ●ACGMEのアウトカムプロジェクトとNext Accreditation System(マイルストーン)

コンピテンシー基盤型の教育は1920年代米国の産業界で始まり、1960年代の教員養成改革で議論され、それが医学教育に取り入れられてきました。1日本で指導医ワークショップ(富士研)が開始されて間もない1978年、WHOの報告書でWilliam McGaghieらが、「コンピテンシー基盤型プログラムが意図するアウトカムは、地域の条件にあわせ、地域のニーズを満たすための、一定レベルの習熟度で診療できる医療専門家である」と定義しています。2その後、米国・カナダ・英国・オランダなどでコンピテンシー基盤型医学教育の議論が進み、米国では1999年にACGMEから以下のような6項目の一般コンピテンシーが公開されました(アウトカムプロジェクト)。

  • ・患者ケア
  • ・医学知識
  • ・プロフェッショナリズム
  • ・対人コミュニケーション
  • ・診療に基づく学習と進歩
  • ・システムに基づく診療

しかし、米国でも現実にはプログラム責任者や指導医のコンピテンシー基盤型教育に関する理解は進まず、従来の知識やスキル獲得に偏重した研修内容となっていました。有効な評価方法などは、2010年代になりNext Accreditation Systemでマイルストーンなどの開発、適用を待たなければなりませんでした。

指導医がその場で知識を問う質問をしたり、評定尺度(rating scale)やチェックリストを用いたりではアウトカムを評価できず、マイルストーンを使うことで、指導者間や研修分野間、指導者と学習者でも求められるコンピテンシーが共通理解となりました。新専門医制度の議論で、総合診療専門医のコンピテンシーは議論されていましたが、多くの専門領域では具体的なコンピテンシーの議論は十分ではありません。コンピテンシー基盤型医学教育に関しては、多くの指導医講習会ではまだ十分には扱われていませんので、指導者側でもしっかりとした理解と準備が必要です。

初期研修のアウトカム像

初期臨床研修の基本理念(医師法第16条の2第1項に規定する臨床研修に関する省令)は以下のようになっています。従来のものからの変更点はありません。臨床研修は、医師が、医師としての人格をかん養し、将来専門とする分野にかかわらず、医学及び医療の果たすべき社会的役割を認識しつつ、一般的な診療において頻繁に関わる負傷又は疾病に適切に対応できるよう、基本的な診療能力を身に付けることのできるものでなければならない。

2020年からの臨床研修の改定では到達目標には以下のとおり、プロフェッショナリズムおよび医師に求められる具体的なコンピテンシー(資質・能力)、研修終了時にはほぼ独立して遂行できる基本的診療業務(EPA)が詳述されています。

  • A.医師としての基本的価値観(プロフェッショナリズム)
    • 1.社会的使命と公衆衛生への寄与
    • 2.利他的な態度
    • 3.人間性の尊厳
    • 4.自らを高める姿勢
  • B.資質・能力
    • 1.医学・医療における倫理性
    • 2.医学知識と問題対応能力
    • 3.診療技能と患者ケア
    • 4.コミュニケーション能力
    • 5.チーム医療の実践
    • 6.医療の質と安全の管理
    • 7.社会における医療の実践
    • 8.科学的探究
    • 9.生涯にわたって共に学ぶ姿勢

厚生労働省が提案しているコンピテンシーの内容は、米国ACGMEのマイルストーンと比較すると必要最小限の範囲となっています。2020年に向けて民医連の特色ある初期研修アウトカムを議論して各コンピテンシーの内容やその学習方略や資源、マイルストーンを含めた評価法などを豊かなものにしていきましょう(ただし、厚生労働省の定めるマイルストーンはオンラインで入力して全国集計するようなので、研修医や指導医の負担にならないような配慮が必要です)。(マイルストーンに関しては後述)

民医連で診療する医師のありようとしては、かつては「generalの基盤の上にsubspecialty」という一定の像を描き、各人がプライマリケアをしっかり身につけることを共通基盤としてその上に得意分野を習得するスタイルで専門診療を大いに展開してきました。この約20年間、家庭医療学、総合診療がジャンルとして固有の位置を占めるように発展し、今日的には「総合性を自らの専門として高い力量を持つ総合医・家庭医」と「総合的基礎力を備えた専門医」がお互いに協働しながら地域のニーズに応える医療を実践するという医師像として認識されています。2019年2月から「未来に向かって民医連の医師と医師集団は何を大切にするのか」1についての議論が始まっています。健康権の保障・地域連携・まちづくり・共同のいとなみ・多職種協働・健康格差にタックル・公正な医療など、医師像に関するいくつかの議論テーマがあります。その議論を通じて初期研修のアウトカム像についても議論し確認していくことが大切です。この研修方針を検討してプログラムを見直して実施していくことで民医連を担う医師を増やすことになると考えます。

研修を支えるしくみ
研修を支える体制について
  • ●多職種が関わる研修
  • ●研修医自身が研修を改善する取り組み
  • ●研修担当事務・事務幹部
  • ●医師幹部
  • ●医局・医師集団の関わり
  • ●共同組織の関わり

民医連では、卒後臨床研修が必修化される前から、各事業所や法人・県連で研修委員会を整備し、研修医自らや看護をはじめとした多職種も参加するなどして、研修に関する学習や研修カリキュラムの整備に努めてきました。この多職種や研修医の参画はJCEPの評価も経て現代では標準となりつつあります。(FDについては後述)

まだ全ての臨床研修病院で充足しているとは言えませんが、民医連以外の臨床研修病院よりは多くの研修担当事務を配置し、ローテーションや評価の管理をはじめとする事務作業や研修医のフォロー、指導医の教育活動の援助などを行っています。全日本民医連や地協での連携も進んでおり、2018年7月には第4回の研修担当事務交流集会が開催されました。

事務幹部の医師研修における役割は重要で、研修担当事務の配置や教育・指導に限らず、研修医とのキャリアに関する面談や医学生担当者との連携の要となる役割があります。また新専門医制度では外部の研修施設との連携・対応も多くなり、民医連外で専門研修を行う専攻医との関わりも多くなってきます。制度を理解し事業所の管理会議などでも医師研修に関して課題や到達を共有しておくことも重要です。

医師幹部はプログラム責任者を務め、あるいは援助する関りだけではなく、初期から後期への進路選択・キャリアプランへの援助や、SDHの可視化やアドボカシー活動などへの取り組みを研修や日常医療活動の中でけん引する役割、専門研修施設との連携の役割があります。

医師研修はすべての全ての職種が関わる課題です。直接の指導医や研修委員会任せにせず、法人・事業所・医局全体の課題として議論し取り組みましょう。特に民医連として重視する研修内容や研修プログラムの基本については、定期的に医局・医師集団で議論すべきです。また、看護集団などで医師研修に関する議論を定期的にすることなども検討しましょう。

メンター制度なども検討し研修医のキャリアプランに助言できる仕組みも作りましょう。

研修指導者として医師以外の医療職や民医連の特徴でもある共同組織がどのように医師研修に関わるか、単に360度評価を行うだけではなく、多職種協働のためのコンピテンシー、共同のいとなみやまちづくりの視点が重要です。すでに一部の研修病院で取り組まれていますが、研修医を支部・班会に所属させるなどして、地域のニーズを理解し、まちづくりの価値を意識できるアウトリーチ活動を研修に取り入れましょう。指導医評価だけではなく指導者についての評価にも取り組みましょう。

研修委員会(研修管理委員会)
  • ●研修委員会(管理委員会)の機動性・構成メンバー
  • ●研修委員長・副委員長やプログラム責任者の援助

初期研修で必要とされる「研修管理委員会」のしくみだけではなく、日々の研修環境の改善や研修医や指導医からの要望や意見をタイムリーに検討する仕組みが重要です。2020年の改定では、全国共通のマイルストーン評価の実施と評価表の管理が求められます。

研修委員会の構成員には必ず研修医、他職種や、可能なら研修医と世代の近い上級医を入れましょう。外部の研修協力施設などからの参加が難しいところもありますが、形式的な委任状だけではなく、研修医のローテーションのタイミングなどで日頃から意見を聞いておく仕組みを作りましょう。

開催頻度は、最低でも年に4回、できれば毎月の開催を追求しましょう。

研修委員長・プログラム責任者が仕事しやすい環境整備や支える仕組みも検討しましょう。また、研修委員長らが医学教育学会、JCEPの会議、臨床研修研究会などで卒後医学教育について、情報収集し、学び発表する機会も、通常の医学会参加枠とは別にするなどして保証しましょう。

研修管理委員会の外部委員には、共同組織の方や教育関係者に依頼したり、地域で連携している医療機関に依頼したりして互いに出しているところがあります。特に共同組織の方には必ず参加してもらうように工夫しましょう。

実際の研修管理委員会の運営では、総括的な研修評価なども扱いますので、2部制にするなど工夫しているところもあります。

研修事務担当者の役割
  • ●研修事務担当者の位置づけ・配置
  • ●研修事務担当者の業務基準
  • ●研修医・指導医とのかかわり
  • ●研修事務担当者政策
  • ●全国・地協の交流と新人スクール
民医連の臨床研修病院では、比較的、多くの研修事務担当者を配置していますが、新しい研修評価の仕組みや後期研修などへの対応を考えると、多くの施設で担当者を増員する必要があるでしょう。研修管理についてのスキル蓄積や、研修医とも継続して関わることを考えると、一定期間、モチベーションを持って継続して従事することが重要です。また若手の事務職の場合は、研修医と一緒に育ち合うという視点や事務職のキャリア形成という視点も重視しますが、事務職以外(看護師・薬剤師・臨床検査技師など)が医師研修に関わることもあり、それぞれの専門性も生かした関わりや工夫も共有する仕組みを作りましょう。宮城民医連では、医師関連事務政策を検討中です。
  • 研修委員会の運営・報告/研修に関する情報提供、ニュースの作成
  • ローテーションの管理/評価表の依頼・回収・整理/研修手帳などの管理
  • プログラム責任者の補助(研修方針やプログラムの整備)
  • 臨床研修に関する年次報告の作成/補助金の申請
  • 指導医講習会受講者の管理
  • JCEPなど外部評価への対応(病院機能評価、厚生局適時調査など)
  • 研修医への目配り、体調管理の補助・把握、研修医室の管理、シミュレーターやスキルズラボの管理
  • メンターの役割(2年間を継続して研修医を見ていく役割)・管理
  • 指導医の教育活動の支援(学習会やCPC等の設定や資料準備など)
  • 外部の研修施設や外部研修委員との連絡
  • 研修医との面談設定、進路調査、面談報告の作成
  • 医学生実習の準備、報告
  • 民医連内の研修関連行事、地域などでの研修会の案内など(その他、第4回研修担当事務交流集会で意見を多数いただいています)

研修事務担当者の交流や実務に関する情報交換などを目的に地協での集会なども位置付けましょう。2019年12月には医学生担当分野と合同で新人対象とした「新人スクール」を予定しています。

FD(Faculty Development)
  • ●FD講座
  • ●日常のFD活動
  • ●若手からの指導医講習会参加
  • ●指導医講習会の内容充実

現在、民医連内で年に1~2回程度の指導医講習会が開催されています。2020年の改定やコンピテンシー基盤型医学教育に対応した指導医講習会を全日本民医連でも関わりながら開催していきます。

多くの病院で平均以上には指導医講習会を受講済みの指導医がいますが、1回の指導医講習会受講だけでは、例えば有効なフィードバックの方法を活用するのは困難で、研修委員会や医局単位での簡単なFDに関する学習会が必要です。特に協力型研修病院・協力施設では、指導医講習会を受講していない指導医も多く、研修管理委員会でも議論して、指導医講習会の受講、継続したFDの取り組みを進めることが重要です。また、上級医の世代も教育に関わることで自ら学び直す効果は期待できますが、上級医任せにしないで指導医とのいわゆる「屋根瓦」を重視しなければなりません。卒後3-4年目から積極的に指導医講習会に参加して、研修指導の理論やスキルを身につけることも重視しましょう。

また、すでに指導医講習会を受講した指導医向けには、フィードバック法やマイルストーンの評価の具体的な方法などを中心に、短時間のFD講座(いまさら聞けないFD講座など)をICTも活用して行います。新しい取り組みや情報も発信していきます。

医師研修と多職種連携
  • ●多職種協働と研修指導者
  • ●SDHや地域包括ケアを意識した多職種カンファレンス
  • ●多職種の教育への関与
  • ●360度評価の準備

研修医の教育には、指導医や上級医だけではなく、多職種の関わりが重要です。民主的集団医療として培ってきた民医連の多職種協働の蓄積が大きな役割を発揮します。SDHや地域包括ケアを意識した多職種カンファレンスや、多職種で育ちあうしくみづくりが大切です。また、医療介護安全にも関わる多職種間のコミュニケーション改善や権威勾配を減らすことも教育のアウトカムとして検討しましょう。

また、若手看護師など職員教育に研修医自身が関わる取り組みなども検討しましょう。

2020年の研修制度改定では、360度評価が正式に取り入れられます。現時点では形式的な取り組みになっている研修病院も少なくありません。具体的に形成的評価として活かしていく仕組みを再構築しましょう。今から医師以外の職種での指導者としての関わりや評価の仕組みを学習し準備を始めましょう。

福岡の千鳥橋病院では、同期入職の多職種で地域診断フィールドワークを半年にわたって取り組んでいます。

他医療機関との連携
  • ●研修における他医療機関との連携
  • ●地方厚生局や県の地域医療対策協議会

基幹型研修病院と協力型研修病院・研修協力施設という制度内の連携だけではなく、地域で研修医を育てるための連携や総合診療・プライマリケアなどの分野での連携が重要です。先進例などを参考にそれぞれの地域で新しい連携を構築しましょう。都道府県や地方厚生局の動きなどに注目するとともに関係づくりも重要です。医師法改正に伴い県の地域医療対策協議会に民間病院が参加するようになりました。初期研修や専門研修との関係でもその重要性は増しています。

コープおおさか病院、芦別平和診療所などいくつかの事業所で民医連外の研修病院からの地域医療研修を受け入れています。

県連・地協・全日本民医連の役割
  • ●県連研修委員会・医師委員会などの役割
  • ●地協の研修委員会・医師医学生委員会
  • ●全日本民医連研修委員会・医師部、イコリス
  • ●全国集会、自主研修会

基幹型臨床研修病院中心の研修システムになりがちですが、県連内の協力型病院・研修協力施設での研修を充実し、地協での連携を進めることなどに関しては県連研修委員会を設置して大局的に検討しましょう。

各地協の研修委員会(医師医学生委員会)を中心に地協内連携を進め、基幹型臨床研修病院がない県連の医師養成への援助や、地協単位での交流(オリエンテーション・症例発表・学習会・回診など)も行われています。指導医の人事交流も検討しましょう。進んだ県連や地協のしくみを互いに学んで取り込み、さらに向上することも必要です。巻末に各研修病院などでの先進例Good Practiceを収集し共有するシステムを提案しています。

サイトビジットでは、民医連が重視している研修内容に注目するなど、JCEPの訪問審査などでは見ないところに重点を置いて研修の質を高めていく工夫が必要です。

地協内などで県連を越えた枠でローテーション研修をしている研修医には、各研修医の所属県連に対する帰属意識などへの配慮も必要です。

全日本民医連としては、民医連の理念や医療・介護活動の2つの柱、まちづくりなどの概念を医師研修の中でどのように取り組むか、2020年の制度改定に向けての対応援助やTransitional Year研修を含む後期研修への対応・援助が必要です。コンピテンシー基盤型を意識した指導医講習会の開催・援助や、イコリスでの情報発信、医療福祉生協連と共催している臨床研修交流会の開催を継続し内容の見直し、後期研修のプログラムや連携の整備などを当面の重点課題とします。

引き続きアンダー3000問題への対応も必要で、援助や情報交換をする体制も取ります。2019年度は新人研修担当事務スクールも行います。また若手指導医層らによるサイトビジットも試行されています。地協内や全国で指導医が交流することで研修環境を一定の水準で統一・向上していくことも検討します。

全日本民医連や地協単位で行われている集会なども研修医の積極的な参加を促し、学習の場として位置付けることも検討しましょう(医療介護倫理交流集会、HPHカンファレンス、医療介護安全交流集会、学術運動交流集会、看護介護活動交流集会、共同組織活動交流集会、労災セミナー、平和学習、国会見学など)。すでに精神科や小児科では研修医向けの企画を行っていますが、自主研究会は研修医に参加を促すだけではなく、スケールメリットを生かして後継者を育てるという点で集会や日常の活動を見直すことを提起します。各研修病院だけではできないような教育セミナーの開催も地協の援助などで検討します。

この医師研修方針についても、各レベルでの研修委員会で定期的に議論し、内容と実践のバージョンアップを図ります。

外部評価(Peer Review、JCEP受審)
  • ●相互評価
  • ●JCEP受審

2020年の制度改定では、第三者評価が強く推奨され、2025年頃に予定される次期改定では必修となります。また、新専門医制度でもサイトビジットが行われる予定です。各地協を中心に研修委員長会議・医師医学生委員会などで各研修病院を相互評価し、必要な援助を行ってきました。現在は総合診療領域で全国的な相互評価Peer Reviewの試みが始まっています。

現在までに、47の研修病院中、38(80.9%)がJCEPの訪問審査を受け、おおむね高い評価を得ており、一般外来研修などがJCEPの評価項目にも取り入れられてきました。JCEPの訪問審査はサーベイヤーによりバラツキはありますが、準備の段階から自分たちの研修体制や内容を振り返り病院全体で改善に取り組む機会とすることが重要です。引き続き、全病院が受審できるように地協を軸に議論や実際の模擬サーベイなどを援助していきます。指導医や研修事務担当者も積極的にサーベイヤーとしてJCEPに関わるようにしましょう。

民医連として重視する研修内容、具体的な研修場面
民医連として重視する研修内容
  • ●民医連綱領を学ぶ
  • ●プロフェッショナリズム(組織性)
  • ●多職種協働のためのコンピテンシー
  • ●医療・介護活動の2つの柱(特に医療倫理)
  • ●地域包括ケアのためのコンピテンシー
  • ●アウトリーチ・まちづくり・ヘルスプロモーションなどを意識した研修
  • ●健康の物理的・社会的決定要因
  • ●ヘルスアドボカシー、エンパワーメント

一般的に国の制度として求められる共通部分の研修目標では強調されていませんが、私たち民医連として重視する研修内容としては、民医連綱領を学ぶ機会、多職種協働における医師のコンピテンシー、医療・介護活動の2つの柱、地域包括ケア時代に向けたコンピテンシーなどがあります。アウトリーチを意識し、ただ病院の外に出るだけではなく、そこで学んだことを振り返ってまちづくりへの参画やヘルスプロモーションやヘルスアドボケイトに繋げることを重視します。

民医連の研修の特徴は以下の5点にまとめられます。これらは指導医だけの課題としないことが大切で、研修医(学習者)自身がどう学ぶのかを考えることとともに、多職種協働・医療安全・医療倫理・アドボカシーなどは医師・医師集団だけではなく、全職種の職場教育(育成)の課題として取り組むことを検討しましょう。

  • ①地域で育つ
  • ②多職種・共同組織で育つ
  • ③役割で成長する
  • ④主体者として参加する
  • ⑤SDHを意識する実践の中で育つ
  • 『医療・介護活動の2つの柱』
  • ①貧困と格差、超高齢社会に立ち向かう無差別・平等の医療・介護の実践
  • ②安全、倫理、共同のいとなみを軸とした総合的な医療・介護の質の向上

例えば、多職種カンファレンスへの参加を位置づける、一般外来研修における担当症例の選び方やSDHを意識した振り返り、経済的サポートツールなどを使った社会的処方など、様々な具体的な工夫や多職種の関わり、継続して学習するしくみが重要です。マイルストーン表を独自に作成するなど検討しましょう。

東海北陸地協では、地協内の研修医の集会で、SDHを意識した症例検討会を行い、準備の段階から指導医も巻き込んでいます。

制度教育の内容を学習者主体の企画となるよう、内容の充実を検討しましょう。京都のSDHカンファレンスのように実際の症例検討の中で社会保障制度を学ぶ取り組みもあります。

プロフェッショナリズムについては、医学生の主に低学年の段階から簡単な講義が行われていますが、日常診療場面などで医師や医療職としてプロフェッショナリズムを検討する事例はたくさんあり、指導医や多職種で事例を振り返り検討するしくみ、症例検討会やレジデントデイを利用してSEA形式等で振り返って共有することも大切です。

健康の物理的・社会的決定要因はそれを認知するだけではなく、問題解決や具体的な行動に結びつくようにプログラムを工夫しましょう。民医連が取り組んできている、災害医療、放射線被ばく医療、公害医療、労災職業病医療、薬害への対応などからも学びます。

SDHなどを可視化していく臨床研究のサポートについては、各地協や全日本民医連でアドバイス・サポートできるシステムを整備します。研究計画書をかけることを初期研修の目標として検討しているプログラムもあります。

これらの具体的な研修のカリキュラムに関して、全日本民医連として指導医講習会などでのワークショップを企画して、教育方法について共有、強化することを検討します。

ヘルスアドボカシー、エンパワーメントについては、CanMEDSのframework枠組み(Teaching and Assessment Tools Guideのアドボカシーに関する主要部分は翻訳済み)や、カナダ家庭医療協会のベストアドバイス(日本HPHネットワークが翻訳)なども参考にします。しかし、日常の診療場面でのSDHについての気づきが基本となり(いわゆるミクロレベル)、指導医や多職種での日々の実践や関わり、ケアカンファレンスへの参加などが重要です。特にMSWとの連携が重要なので、オリエンテーション時などにMSWの業務を学ぶ取り組みを検討しましょう。また、メゾレベルの視点では。患者や住民へのエンパワーメントという視点でのコンピテンシー獲得も検討しましょう。マクロのアドボカシーに関しては、政治的な発言や関りを敬遠させる日本の教育の問題もありますが、欧米の医師や医学会・医療団体の取り組みを学んだり、社会疫学の事実を学んだりする仕組みを検討しましょう。

具体的な研修場面
  • ●オリエンテーション
  • ●病棟研修(内科・外科・小児科・産婦人科)
  • ●救急研修・精神科
  • ●一般外来研修
  • ●協力型研修病院・研修協力施設
  • ●地域医療研修
  • ●診療領域・職種横断的なチーム

オリエンテーションは、研修の開始時期に2~3週間程度の期間で行われており、可能な限り、講義形式を少なくするなど、学習効果の高い方法をとり、内容によっては実際の病棟研修開始後に組み込むなどの工夫も検討しましょう。内容としては次のような項目が推奨されています。(研修制度・プログラムの説明、医療倫理・守秘義務・ハラスメント、カルテ記載・保険診療・文書作成、採血・注射、BLS・ACLS、各種医療機器の扱い、コミュニケーション・接遇、医療安全管理、院内感染、災害時対応、多職種連携・チーム医療、地域連携、図書室・文献検索・EBMなど)

病棟研修では、総合診療病棟や屋根瓦方式の指導体制などの整備を検討しますが、DPCなど医療制度による入院期間の短縮もあり、急性期の病棟だけで学べることは以前ほど多くはありません。どうしても知識としての症例経験を積み重ねることや、スキル習得に偏りがちになる面があり、カンファレンスの持ち方や多職種の関わりが重要です。また、回復期病棟や地域包括ケア病床での研修についても検討が必要です。

内科、「入院患者の一般的・全身的な診療とケア及び一般診療において頻繁に関わる症候や内科的疾患に対応するために、幅広い内科的疾患に対する診療を行う病棟研修を含むこと」となり、24週間(約6ヶ月)の研修期間が必要です。経験すべき症例・症候は別紙のマトリックス表(JCEPの形式で制度改定に合わせて作り直してあります)を参照して下さい。内科専門医の経験症例の関係では、将来、内科領域の後期研修を考えている研修医に関しては、各病院・県連などの後期研修委員会とも相談して、J-OSLERに登録するしくみ(指導医の登録も必要)を検討しましょう。

救急、「救急部(救急部がない場合には救急外来)等を適切に経験させることにより対応することとし、頻度の高い症候と疾患、緊急性の高い病態に対する初期救急対応の研修を含むこと。また、麻酔科における研修期間を、4週を上限として、救急の研修期間とすることができる。この場合には、気管挿管を含む気道管理及び呼吸管理、急性期の輸液・輸血療法、並びに血行動態管理法についての研修を含むこと」となっており、麻酔科との連携や他のローテーション中の並行研修、当直研修も正確にカウントするしくみが必要になります。

外科、「一般診療において頻繁に関わる外科的疾患への対応、基本的な外科手技の修得、周術期の全身管理などに対応するために、幅広い外科的疾患に対する診療を行う病棟研修を含むこと」となり、4週以上(8週以上が望ましい)の研修期間が必要です。この期間、あるいはこれとは別に整形外科も含めるなどの検討もしましょう。

整形外科、必ずしも必修診療科ではありませんが、多くの病院で外科に含めるなどして必修対応をしています。整形外科は全年齢層の運動器に関わる疾病や外傷を対象とし、保存治療から手術、リハビリテーション等を行う診療科です。超高齢社会の到来やスポーツ人口の増加で日常診療や救急外来において運動器診療が必須となっています。総合的力量が求められる民医連初期研修だからこそ運動器疾患の適切な診断と初期治療ができ、専門医にコンサルトできるよう、獲得目標の設定と指導方法、習熟度の確認ができるよう民医連整形外科診療委員会においても議論していきます。

小児科、「小児の心理・社会的側面に配慮しつつ、新生児期から思春期までの各発達段階に応じた総合的な診療を行うために、幅広い小児科疾患に対する診療を行う病棟研修を含むこと」となり、同様に4週以上(8週以上が望ましい)の研修期間が必要です。小児の入院疾患の変化により、小児の入院患者数が減少している場合などは、他の協力施設などとの連携が必要になります。その場合でも外来診療などを学べるような工夫を相談しましょう。健常な小児に対する健診や思春期疾患など成育医療を含むように工夫しましょう。特に小児の心理・社会的側面のところは、貧困問題や学校での問題などにも目を向けた研修が必要です。

産婦人科、「妊娠・出産、産科疾患や婦人科疾患、思春期や更年期における医学的対応などを含む一般診療において頻繁に遭遇する女性の健康問題への対応等を習得するために、幅広い産婦人科領域に対する診療を行う病棟研修を含むこと」となり、同様に4週以上(8週以上が望ましい)の研修期間が必要です。妊婦や授乳中の女性に対する処方薬の注意なども取り入れましょう。

精神科、「精神保健・医療を必要とする患者とその家族に対して、全人的に対応するために、精神科専門外来または精神科リエゾンチームでの研修を含むこと。なお、急性期入院患者の診療を行うことが望ましいこと」となり、必ずしも精神科病棟研修ではなく、急性期の入院患者におけるリエゾン対応で研修できる機会を検討することになると考えます。ただし、以前からの研修病院の指定基準に入院患者数100人という記載があり、注意が必要です。

一般外来研修が2020年の制度改定で必修になりますが、病棟での入院期間短縮や地域包括ケアについての教育を考えると、訪問診療を含む一般外来研修は今まで以上の位置づけが重要で、8週以上の研修を目指して準備を進めましょう。できるだけ継続して診療することが重要なので、週に1回など可能な範囲で通年で継続するシステムも検討しましょう。研修医が担当する症例(病棟で担当した患者さんの退院後のフォローも含め)、患者さんへの同意取得、指導や振り返り、外来カンファレンスなどの工夫、病棟研修との単位調整などが必要です。患者中心の医療や、SDHに注目し、社会的処方についても経験できるように工夫しましょう。

また、3年目以降を展望した時に、EPAとしては、外来診療医における患者数などの具体的な目標も決めて段階を経ながら研修する必要があります。また、後期研修では慢性疾患の外来管理を学ぶ機会は減ることが予想されますので、初期研修の段階から慢性疾患管理や患者さんを全人的に主治医としてフォローする主治医性に関しても学ぶ必要があります。地域医療研修を実施する研修協力施設・協力病院での研修についても検討が必要です。時間外の小児科外来や救急外来は一般外来研修としては認められないので注意が必要です。一般外来としてダブルカウントが可能な科は、内科・外科・小児科・地域医療です。

協力型研修病院研修協力施設となる小規模病院や診療所でも医師研修の役割を分担し、地域包括ケアや地域連携の学習カリキュラムを整備し、一般外来研修ではモデルづくりに取り組み、研修のリソース不足が予想される大学病院や地域の中核病院などからの地域医療研修なども積極的に受け入れましょう。

地域医療研修は、従来よりも地域医療やへき地・離島などの医療を意識する改定となります。小規模病院や診療所での研修も意識的に検討しましょう。その際、総合診療分野を除いては専門研修において診療所で研修する場面はごく限られますので、地域のニーズを身近に感じ、場合によっては将来の働き場所として考えてもらえるような期間や内容の工夫も検討しましょう。新制度では、在宅医療研修も重視されており、取り組みの不十分なところは整備が必要です。また、地域包括ケアシステムを構成する事業所や提供体制についても、机上ではなく、介護施設での研修や実際に地域ケア会議に参加するなど、アウトリーチや現場で学ぶしくみを検討しましょう。「病棟研修を行う場合は、慢性期・回復期病棟での研修を含めること」という点では、多職種の関わりが重要になります。

また、これも2020年の制度改定で必修になりますが、病院内の横断的な委員会や多職種チームなどの活動も研修方略として検討が必要です(倫理委員会、ICT、栄養サポート、認知症ケア、退院支援、緩和ケア、褥瘡対策、ACLS委員会など)。

研修期間
  • ●研修期間の管理
  • ●Transitional Year研修

初期臨床研修の期間は2年以上となっており、研修内容やその取り組みによっては3年となっているところもあります。ただし、専門医制度の全国的な動きなどからは、2年間で国から求められる内容は終了できるようにプログラムを作成することも検討しましょう。後述のTransitional Yearも含めて3年間で専門分野を選択するという考え方も実際には検討可能です。

2020年からの制度改定では週単位で研修期間をカウントすることとなっており、4-8週でローテーションする科については、研修医の多い病院では従来の月単位とは異なるローテーション管理が必要になります。また、一般外来・救急外来などの並行研修を必修分野の研修中に行う場合には、研修期間を4週ではなく5週で計画するなどの工夫が必要です。ダブルカウントできるものとできないものを正確にしておくことも求められます。

女性医師も多く、産休・育休をはじめ研修休止期間の管理などが求められます

研修医の働き方
  • ●研修医の働き方
  • ●ワークライフバランス
  • ●女性医師などの働き方
  • ●多様なSOGI(Sexual Orientation and Gender Identity)への理解促進
  • ●研修医の健康

2018年6月、「働き方改革関連法」が成立しました。厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」が発表した「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」に示された内容に対応し、医師労働の内容の基準(労働時間、研究、自己学習等)の考え方、医師の出退勤管理(特に当直明けの保障など)、タスクシフトの推進など、法人・事業所で総合的な検討を進める必要があります。

現在、多くの病院で正職員として研修医を雇用していますが、時間外労働をはじめとした労務管理への取り組みは今まで以上に必要となります。特に注意するのは外部の協力病院や研修協力施設での研修中の管理です。地協内の各研修病院での対応などについて日頃から交流しておくことも大切です。

ワークライフバランスや女性医師に対する支援など、多様で柔軟な働き方の取り組みが進んだ県連・研修病院などを参考にしましょう。あらゆる性的指向、性自認の研修医が安心して働けるよう労働環境の整備や、職場教育を進めていきましょう。

研修医の健康に関する取り組みも、全国で共有します。メンタルヘルス対策やモチベーションを高める・維持するための取り組みとして、臨床心理士によるカウンセリングを取り入れている研修病院もあります。

専門研修とTransitional Year研修
  • ●民医連内の専門研修プログラムの活用
  • ●他の研修施設との連携
  • ●Transitional Year研修の積極的位置づけ
  • ●研修医のキャリア支援
  • ●日本版のTransitional Year研修プログラム整備(マイルストーン表、ローテーション例)
  • ●Transitional Year研修を含めた後期研修医向けの企画

現在、民医連内では、内科・総合診療・病理・整形外科・精神科・救急・麻酔科で基幹施設となるプログラムがあります。さらに地域の病院や大学と連携したプログラムがあり、初期研修医へのていねいなキャリア支援により、民医連内あるいは連携したプログラムを選んでもらえるよう取り組みます。また各プログラムの内容を民医連らしい視点で整備していきます。研修の条件を拡げる意味でカリキュラム制の採用も検討しましょう。

米国では医学部卒業前に日本の初期研修にあたる臨床実習(クリニカル・クラークシップ)を終えて、卒業時に各専門分野のプログラムでマッチングをするシステムになっています(National Resident Matching Program)。将来の進路によってはTransitional Year研修を推奨している分野もあり、全米で135のプログラムがあり、1300名以上がこの方式で研修をしています。例えば米国インディアナ大学では、麻酔科、皮膚科、神経科、眼科、理学療法、リハビリテーション、放射線腫瘍学、または放射線医学の分野でTransitional Year研修を推奨しており、その他、公衆衛生機関に勤務予定の医師、軍医の基礎教育、行政職や非臨床研究者になる医師なども対象となるようです。7カ月の基本的臨床スキルのローテーション後に将来進む分野によって選択研修ができる仕組みになっています。

3年目からの専門医研修は義務ではありません。現行の新専門医制度では、将来、専門分野に従事していく上で関連する領域の研修が十分整備されているとは言えません。初期研修2年目ではまだ専門分野を決められない研修医や2年間の初期研修では、その後の専門分野に特化した研修を進めていくうえで不足を感じている研修医にはこの方法での研修を勧めます。一般的に内科や総合診療分野では、Transitional Year研修は必要ないと考えます。また、地域枠の民医連奨学生に対して、3年目の研修として提案する試みも検討されています。

将来の専門分野や初期2年間の到達状況を把握して、ローテーションを検討し、ACGMEのTransitional Yearのマイルストーン表を参考に、各施設・研修医毎に目標を確認して研修を開始します。3~4カ月毎(必要な場合はローテーション毎)に、マイルストーン表を使用して自己評価して指導医と一緒に振り返りの機会を持つようにします。専門研修の専攻医やTransitional Year研修の研修医を単なる労働力・穴埋めとして使わないように研修委員会でも責任をもってプログラムを管理することが重要です。特に専門分野を決めていないTY研修医に対しては定期的に面談するなどキャリア支援も重要です。

全日本民医連では、Transitional Year研修を進める研修医を対象とした研修会も検討します。

研修医の仲間づくり
  • ●競争ではなく共に学ぶ
  • ●研修医の集団化(事業所・県連・地協・全日本)

人は集団の中で成長します。私たちの研修は競争ではなく、お互いに支え合って楽しく学ぶことが重要です。研修医の集団化も重視します。レジデントデイや研修医ミーティングなど、研修医が顔を合わせて振り返りができるしくみをつくりましょう。研修医がお互いを支え合うことでメンタル不調のサインに早く気付くなどの事例もあります。

少人数の研修病院では県連内・地協内での交流、地域の他施設の研修医や同期で入職する多職種の仲間との交流も重視しましょう。

各県連・地協の青年医師の会では学習会・交流会、合宿・小旅行などをとおして親睦を深めています。関東地協と北関東甲信越地協では合同で青年医師連絡会議を行い、毎年青年医師交流集会を開催しています。九州沖縄地協では実行委員会を設置し、毎年青年医師交流集会を開催しています。学習や講演をとおして医師としてのスキルアップを図り、地協内の青年医師の親睦と交流を図り仲間づくりをしています。

ACGMEのキャンペーン、「Back to Bedside」を紹介します。研修医のバーンアウトを防ぐための学習環境を議論しています。ACGMEから助成金も出て、各研修施設がオリジナリティのある研修改革に取り組んでいます。
  • 1.ベッドサイドで患者と過ごす時間を増やす、直接、ケアする時間を増やし、患者や家族と対話する
  • 2.多職種と研修医のチームワークと尊敬を共有
  • 3.非臨床や管理に費やす時間を少なくする
  • 4.サポートしてくれる同僚
  • 5.臨床的に熟練と進歩し自立していける学習環境

J Grad Med Educ. 2017; 9(4): 551-554

医学生を後継者として迎えること
  • ●医学生委員会と研修委員会の協力
  • ●卒年を中心とした医学生対応
  • ●奨学生の育成指針・マッチング後の関わり
  • ●医学生の実習などでの研修医の協力

医学生を後継者として迎えることは組織をあげて取り組む課題であり、私たちは医学生に関わる活動において「2つの任務」を掲げて重視しています。

医学教育のモデル・コア・カリキュラム改訂(2017年)、卒前医学教育の変化で、「教育」が医学生を民医連の医療や介護の現場に向かわせるようになっています。大学との関係を強め、医学生の臨床実習(特にクリニカルクラークシップ)や自主的な活動、医学教育の機会では医学生委員会、研修委員会の協力が必要です。

卒年を中心とした医学生対応では研修委員会や研修担当医師(指導医層)・研修事務担当者の関わりが重要です。卒年対応の年間計画や合同研修(病院)説明会、医学生のつどいや地協・県連の取り組みなど情報共有を図り進めましょう。

中低学年からの奨学生の育成指針などについても研修委員会で並行して議論してもよいでしょう。民医連の初期研修の理解を進め、医学部での学び方なども援助しましょう。今後もマッチングで初めて民医連と出会う医学生も一定いますので、マッチングから入職するまでの約半年間の関わり方も検討が必要です。指導医やスタッフとの顔合わせや、民医連の活動を理解してもらうことや世代形成も視野に入れた企画を検討しましょう。

身近な先輩であり、より良い研修を一緒に作ろうとする研修医が医学生の実習や取り組みに関わってもらうことも大事な機会です。研修委員会や指導医、研修事務担当者でよく相談をして、研修医の参加、協力も位置付けましょう。また、研修医が学んだことを下の世代に教え、帰していくという文化も大切にしましょう。

具体的なGood Practiceを共有しよう

現在までに全国の民医連研修病院で様々な進んだ取り組みがあります。具体的なGood Practiceとして、全国で共有しましょう。これは2018年内にも収集を始めます。各地協で相互評価Peer Review含めて進めましょう。

【基幹型臨床研修病院】

線はJCEP未認定病院 線はJCEP受審予定

  • 勤医協中央病院
  • 津軽保健生協健生病院
  • 中通総合病院
  • 坂総合病院
  • わたり病院
  • 利根中央病院
  • 埼玉協同病院
  • 下越病院
  • 甲府共立病院
  • 長野中央病院
  • 松本協立病院
  • 船橋二和病院
  • みさと健和病院
  • 東葛病院
  • 大田病院
  • 立川相互病院
  • 川崎協同病院
  • 汐田総合病院
  • 城北病院 研修管理委員会を「研修を成功させる会」としている
  • みどり病院
  • 協立総合病院
  • 南生協病院
  • 千秋病院
  • 津生協病院
  • 京都民医連中央病院
  • 耳原総合病院
  • 西淀病院
  • 尼崎医療生協病院
  • 土庫病院
  • 和歌山生協病院
  • 鳥取生協病院
  • 松江生協病院
  • 水島協同病院 多職種の表彰、同窓会
  • 岡山協立病院
  • 福島生協病院
  • 広島共立病院
  • 宇部協立病院
  • 徳島健生病院
  • 高松平和病院
  • 愛媛生協病院
  • 健和会大手町病院
  • 千鳥橋病院 当直独り立ちのためのマイルストーン
  • 米の山病院
  • 上戸町病院
  • 宮崎生協病院
  • 鹿児島生協病院
  • 沖縄協同病院

【協力型研修病院・臨床研修協力施設】

用語集

PDF版もご用意しております。下記よりダウンロードしてお読みいただけます。 PDFダウンロード(726KB)