地域医療研修の魅力について
大学教授からみた地域医療のあり方とは
富山大学 学術研究部医学系 医学教育学講座の高村昭輝教授から、医師研修で大切なこと、大学で学べること学べないこと、民医連の医師研修はどう見えているかなどのお話を伺いました。
地域医療の魅力と民医連の医師研修への参加を考えてみませんか。
毎週1本ずつテーマ別に公開していきます。
全9回にわたるシリーズ企画です。
地域医療研修の魅力について
大学教授からみた地域医療のあり方とは
富山大学 学術研究部医学系 医学教育学講座の高村昭輝教授から、医師研修で大切なこと、大学で学べること学べないこと、民医連の医師研修はどう見えているかなどのお話を伺いました。
地域医療の魅力と民医連の医師研修への参加を考えてみませんか。
毎週1本ずつテーマ別に公開していきます。
全9回にわたるシリーズ企画です。
家庭医・総合診療医たちが学びを深めた家庭医ワークショップのレポートです
2024年度に巣立った初期研修医たちの修了式の様子をお届けします
千嶋巌医師は、「専門医を目指すあなたへ」と題し、自身の経験を交えながら、医療のあり方、学びの姿勢、そして社会とのつながりについて語りました。
千嶋医師は、幼少期に母親が大病を患った原体験から医師を志しました。東京での研修後、栃木の診療所に勤務する中で、1週間水だけで過ごした生活困窮者の救急搬送に遭遇し、こうした問題に根本からアプローチできていない自身の無力さを痛感します。この経験が、医療に対する視点を大きく変える転機となりました。
その後、近藤克則氏やイチロー・カワチ氏らの研究に触れ、「健康の社会的決定要因(SDH)」という概念を知り、目から鱗が落ちる思いだったと語ります。SDHとは、個人の健康状態が、その人の置かれた社会経済状況、教育、住環境、地域社会とのつながりなど、さまざまな要因によって左右されるという考え方です。千嶋医師は糖尿病の患者さんの例を挙げ、単に薬を処方するだけでなく、その人の生活背景全体を理解することの重要性を強調しました。
このSDHの視点から、医療現場での「社会的処方」の可能性に着目します。イギリスでは、医療だけでは解決できない患者の課題に対し、地域のさまざまな資源や活動を紹介しつなげる取り組みが進んでいます。千嶋医師は、日本でもすでに同様の活動を始めている人々がいることを知り、感銘を受けました。そして、目の前の人の社会的な課題を見つけ、自分にできなくても誰かにつなぐこと、共に伴走していくことの意義を力強く語りました。
さらに、自らが実践してきた地域との連携について紹介しました。フードバンク宇都宮や栃木ボランティアネットワークといった生活困窮者支援団体、若年者支援機構、シングルマザー支援団体、フリースクールなど、多岐にわたる外部機関との連携を通じて、医療だけでは対応しきれない患者のニーズに応えようとしています。診療所の職員食堂の一部を臨時の食料備蓄場所とする「プチフードバンク」の設立や、市長が中心となって始めた地域住民の交流の場「みんなの保健室カムカム」の活動など、ユニークな取り組みも触れました。NHKの取材を受けたことは、これらの活動が社会的に注目されている証しと言えるでしょう。
「思うは招く」という言葉を信じ、やりたいと思ったことは臆せず声に出し続けることの大切さを千嶋医師は強調します。自身の経験を通して、発信することで共感者が現れ、協力してくれる人が現れるということです。
診療所の現状については、高血圧や糖尿病といった一般的な疾患だけでなく、引きこもり、薬物依存、虐待、発達障害、LGBTQなど、多様で複雑な問題を抱える患者が増えていることを指摘します。これらの「生きづらさ」の根底には、周囲の理解不足や無関心があるのではないかと問題提起し、他者を理解しようと努めることの重要性を訴えました。患者にとって、医療機関が安心できる場所となり、医療従事者が信頼できる存在となることが、生きづらさを抱える人々が再び人を信じ、社会との繋がりを取り戻す第一歩になるということです。
そして、黒柳徹子さんの『窓ぎわのトットちゃん』に触れ、校長先生の言葉がトットちゃんの自尊心を育んだように、医療従事者も患者さんにとってそんな存在でありたいと語りました。
千嶋医師は、社会と身体医学の関係についてより深く学ぶため、働きながら大学院に進学しました。研究生活は多忙でしたが、研究者としての考え方や論文作成の過程を学ぶ貴重な経験になったと振り返ります。「人間、志を立てるのに遅すぎるということはない」という言葉を引用し、年齢に関わらず、やりたいと思ったことに挑戦することの重要性を強調しました。
さらに、死にたいと訴える患者への対応、小児期の逆境体験(ACEs)が後の人生に与える影響、ポジティブ心理学の重要性など、多岐にわたるテーマにも触れました。民医連が持つ全国的なネットワークを活かした横断的な研究への期待も述べました。
最後に、専門医を目指す参加者へのメッセージとして、一流のシェフは一流のレストランに行くように、目指す分野のトップランナーのもとで学ぶこと、自信が持てる領域を一つでも持つこと、そして身体の勉強だけでなく、その人の歴史や心、暮らしにも目を向けることの重要性を語りました。また、患者を自分の親戚や親だと思って接すること、失敗から学び改善していくこと、理不尽な叱責には甘んじる必要はないともアドバイスしました。
千嶋医師は、自身の経験を通して得た学びを共有し、参加者に勇気と希望を与え、共に患者の幸せのために協力していきたいという強い思いを伝え、講演を締め括りました。
講演後には質疑応答が行われ、研修医からの大学院との両立や民医連での疫学研究の課題、医学教育への取り組み、院内での多様性尊重の活動などについてさまざまな質問が寄せられました。千嶋医師は、自身の経験に基づき、具体的なアドバイスを送りました。
講演終了後、千嶋医師は「新入医師の皆さんには、まずは楽しくのびのびと研修を進めてほしいと思います。そして、自分はこれをやるために生まれてきた思えるような領域を見つけてほしいです」と語りました。
4月11日(金)、12日(土)の2日間、全日本民医連主催の2025年度2025年度新入医師オリエンテーション、および新専攻医・後期研修医オリエンテーションがTOC有明コンベンションホール(東京)で開催しました。
新入医師オリエンテーションは昨年に引き続き集合形式で、参加者は今年入職した研修医170人に職員を加え、計269人でした。
一方、今回初めての開催となった新専攻医・後期研修医オリエンテーションには、後期研修医67人、医師研修に関わる事務職員の24人が参加しました。こちらも集合形式での実施となりました。
新たな研修生活に前向きに取り組んでいこうと参加者の意欲や期待感が伝わってくる2日間でした。各オリエンテーションを紹介します。
1日目の4月11日(金)、新入医師オリエンテーションが開催されました。
まず、全日本民医連会長の増田剛医師による歓迎あいさつがあり、入職への祝辞とともに、アントニオ・グテーレス国連事務総長の言葉を引きながら、経済的・社会的格差が健康や命の格差につながっており、医療の果たすべき社会的な役割を認識してほしいと説きました。
続いて、全日本民医連医師部部長の山田秀樹医師によるミニ講演。2月に制作されたパンフレット「まやかしの『医師偏在』~医師不足の解消を~」(80/80パンフ)に沿って、絶対的医師不足の現状が深刻であると指摘されました(「幸せな医師人生をこれから歩むために医師増員を進めよう~80/80パンフを紐解く」【リンク】参照パンフレット)。
この後、自己紹介など班別の交流をはさみ、群星沖縄臨床研修センター センター長の徳田安春医師による記念講演が行われました。講演で徳田医師は、目の前の患者さんの健康状態だけでなく、その背景にある社会構造や歴史にも目を向けることの大切を説きました
昼食、記念撮影の後、午後の最初のセッションでは3人の専攻医が登壇し、それぞれの経験に基づいたアドバイスを新入医師たちに贈りました。
次に「こんな研修をしたい」をテーマに、ワールドカフェが実施されました。ワールドカフェとはくつろいだ雰囲気で行う対話形式の話し合いで、途中、メンバーを交代しながらテーマを掘り下げていきます。全日本民医連医師研修委員の飯島研史医師による進行で、活気あふれる話し合いが展開されました。
休憩の後は、愛媛生協病院家庭医療科の水本潤希医師からのミニレクチャー。知的刺激に満ちた臨床現場のおもしろさを味わってほしいと、適切に診断するための実践的なアドバイスや興味深いいくつかの事例が紹介されました。
この後、班別に研修宣言づくりに取り組み、「半年後の自分への手紙」を各自作成しました。
最後に登壇した全日本民医連医師研修委員長の大島民旗医師から、今日の出会いを大切にし、たった一人で研修を始める新入医師もしっかりと支えていきたいとの励ましの言葉があり、閉会となりました。
「全国にこんなたくさん仲間がいるのがすごく嬉しくで、これからお互いに切磋琢磨できたらいいなと思いました。印象に残ったのは徳田先生の講演で、私たちは戦争の被害者であり加害者でもあることから、医師としての使命をどう果たすべきかということを考えさせられました」(福島生協病院 戸来莉子さん)
「民医連という団体にこれだけ多くの同期がいるとは驚きで、他県の皆さんのお話を新鮮な気持ちで聞かせてもらいました。診断や臨床推論に少し不安を感じていたので、水本先生のレクチャーはとても参考になり、また、楽しみながら取り組めばいいというアドバイスで気持ちが楽になりました」(岡山共立病院 松下尚さん)
「本日オリエンテーションに参加して、今まで学んだことを臨床の場で生かしていこうと決意を新たにしました。徳田先生のお話をお伺いして、世界情勢や歴史を知ることが目の前の患者さんに対することにつながっていくのだと感じ、自分からもっと学んでいこうと思いました」(下越病院 町田知彦さん)
翌4月12日(金)には、初の新専攻医・後期研修医オリエンテーションが開催されました。
冒頭のプログラムは、前日と同じく全日本民医連・増田剛会長の歓迎あいさつ。増田医師は、世界情勢と研修は地続きの問題であり、研修を通じて技能や知識を深めるだけでなく、平和と人権を重視する民医連の役割についても理解を深めてほしいと述べました。
班別の自己紹介をはさんで、栃木・生協ふたば診療所の千嶋巌医師による記念講演がありました(「専門医を目指すあなたへ~医師のプロフェッショナリズム×民医連を考えよう」)。
次に、2人の先輩医師がリモートで参加し、自身の体験を交えて後期研修を進める上でのアドバイスなどを語りました。
昼食・記念撮影を終え、午後の部はワールドカフェに充てられました。「こんな専門医に私はなる!」をテーマに、大島民旗・医師研修委員長による進行の下、途中メンバーをランダムに入れ替えながら意見を交換し合いました。各班で話し合いの結果をまとめて模造紙に記入し、計5班が発表しました。さまざまな意見が出ましたが、多くの班が医師としてのスキルを磨くこと、コミュニケーションを大切にすること、ワークライフバランスを重視すること、といった点を挙げていました。
最後に、原田真吾・医師研修委員会副委員長より閉会のあいさつがあり、「何のために」「誰のために」を常に考えながら、貧困や社会的孤立など困難な状況にいる人に寄り添う医療を実践してほしい、そして民医連としても専門研修とその先の医師としての人生が実り多いものになるようサポートしていくと述べ、初の新専門医向けオリエンテーションは閉幕しました。
「子どもを連れての参加で皆さんにご迷惑をおかけするのではと心配しましたが、気軽に声をかけていただき居心地よく過ごせました。出産、育児でキャリアが中断することへの不安も、今日の先輩医師のお話などでフレキシブルに対応してもらえることを知り、払拭することができました」(埼玉協同病院 居城有葉さん)
「参加者との横のつながりができ、仲間意識も高まって、これから頑張っていこうという意欲がわいてきました。身近な立ち位置にいる先輩方のアドバイスはとても参考になり、すぐに研修の場で生かせると感じました」(城北病院 邵博文さん)
「とても楽しかったです。頼りがいのある同期が多いこともわかり、今後もこのつながりを生かしていきたいです。千嶋先生のご講演では名言がたくさん紹介され、面白かったです。また、地域とのつながりをつくり広げていくというやり方は民医連らしく、ワクワクさせられました」(吉田病院 鳥井沙南さん)
福岡佐賀民医連で大牟田市にある米の山病院です。
毎月、当院の研修医の様子を徒然なるままに綴っている
『研修徒然日記』を更新しました。
今回は、『ここから始まるストーリー』をご紹介します。
記事内容は、下記リンクをクリックしてください!
『(ブログ)ここから始まるストーリー』
〒837-0924 福岡県大牟田市大字歴木4-10
社会医療法人親仁会 米の山病院
医局事務課 研修担当
E-mail:rinsyou-kensyuu@kome-net.or.jp
TEL:0944-51-3311(内線 4040)
2025年4月7日(月)~18日(金)、大分大学医学部6年生の学生さん1名が総合内科・総合診療科学外実習を当院で行いました。
外来見学、訪問診療、嚥下造影や竹田診療所での見学などに参加しました。その他にも組合員さんとの班会に参加し、様々な現場を見ることが出来ました。
実習を通して当院の特色を知っていただけたら嬉しいです。
大分健生病院では奨学生を募集しています
私たちの医療活動に共感し、ともに働く意思がある方を対象に奨学金を貸与しています。
👇お問い合わせ先
大分県医療生活協同組合 大分健生病院(〒870-0935 大分市古ヶ鶴1-1-15)
☎097-558-7241 学生担当(平日17時まで、土曜12時30分まで受付)
☎080-2732-9295 学生担当 田中(上記の時間以外の受付)
✉oitamin-gakutai@oita-iryou.coop 学生担当(24時間受付)
👇ホームページ
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4月28日に医学生ミーティングを開催し、当院の初期研修医・医学生・高校生13名が参加しました。今回は勤医協札幌病院の猫塚義夫医師より北海道パレスチナ医療奉仕団として、昨年11月から約1カ月間、パレスチナのヨルダン川西岸地区を中心に行った医療・子ども支援活動について講演いただきました。
紛争が起きた発端のお話やイスラエルの侵攻により、水・食料・トイレ不足など過酷な避難生活の中で継続される空爆。第16次支援活動は老人保健施設や教会、難民キャンプなどで340名以上の治療に当たりました。今後、この紛争が続いていくのか。どうしたら止められるのか。平和であることの大切さをみんなで考えました。猫塚医師から「日常生活で1%でもガザ・パレスチナの解決のために自分ができることを考えて欲しい」とメッセージが送られました。
参加した学生からは「政治や宗教の影響で子どもたちの夢が揺らぐ厳しい現状であることがわかった」「ライフラインが枯渇しており、助けたくても助けられない現地での活動の難しさを認識した」など感想が寄せられました。
今後も様々な視点から問題を捉え、医師としての役割などを考えていける場を作っていきたいと思います。
FASTエコーなどを中心に学んだエコーセミナーの報告です。