start my doctor life

子どもの病気を治療し、
幸せになる手助けをするのが仕事

― 毛利 陽介 ―

所属:大阪民医連 耳原総合病院

勉強会や指導が充実した病院を研修先に選択

── 耳原総合病院を研修先に選んだ理由は何でしょうか。

毛利:まずは医師を目指したきっかけですが、自分は活発な子どもで、よくケガをして病院に行っていたんです。
そこから医師に憧れ、大阪市立大に進みました。そのまま附属の大学病院で研修をする道もありましたが、大学病院の医局は研究や論文執筆が中心になります。
自分としては臨床に多く関わりたいと思っていたので、将来的なことを考えると少し方向性が違うかなと思うようになったんです。

そこで、研修医向けのイベントに参加したところ、耳原総合病院の理事長に声をかけてもらいました。
見学に行って雰囲気の良さに引かれ、勉強会に何度も誘ってもらったことも決め手になって、ここを研修先に選びました。

──この病院は勉強会や研修が充実しているということですが、どのようなものがありますか。

毛利:ここは研修指導に非常に力を入れた病院です。まず医学生向けですが、自分の学生時代には、年に2回ほど研修医が学生を指導してくれるセミナーがありました。今は私が初期研修医1年目のときに始まった、年1回の実践的なセミナーがあります。研修医向けには昼休みや土日を使った手技などのレクチャーもたくさんあります。

耳原総合病院は救急医療を行っていますが、研修医が救急外来を担当する前には、トリアージコースの勉強も3か月みっちり行います。

ここの病院の特徴として、上から下に教えていく風土があって、上の医師が研修医に、上の研修医が下の研修医に、その次は研修医が医学生向けに教えるんです。研修医は上の先生から教わるだけではなく、人に教えることで自分の勉強になるという、いい形ができています。上の先生もレクチャーのときの資料作成や予行演習の準備をしっかりしてくれて、研修医にかなり時間を割いてくれていると思います。

本当に指導が充実していて、研修医のための病院と言ってもいいくらいだと思います。

──現在の学生向けのセミナーについてもっと詳しく教えてください。

毛利:「24時間当直セミナー」という名称で、これは私が初期研修1年目のときに、同期が発案・主導して始まったものです。座学とは違い、本番を想定した内容で、研修医1、2年目の者たちが中心になって行っています。実際の医療の現場がどんなものかと言えば、まず患者さんは具合が悪くなったら、病院に行くか連絡しますよね。それで医師が呼ばれて治療に当たります。

だからこのセミナーもそうした実際の医療現場と同じ流れを体験しながら進めていくんです。患者役の人がいて、実際に電話をするところから始めます。医師はコールで呼び出され、どんな患者でどんな症状かということを聞きながら、治療室に走っていく、というような本番さながらの動きをします。

最後は上の先生から、その動きや治療の判断がどうだったかというアドバイスをしてもらうんです。実際の勤務に則した内容はとても好評で、全国からの医学生で定員がすぐに埋まってしまうほどの人気になっています。医学生向けにこういう形のセミナーをやっている病院はほとんどないのではないでしょうか。うちの特徴だと思います。

──伺っていると、研修医自身が主体的に動いている雰囲気が感じられます。

毛利:確かに、自主性のある人が多いと思います。自分たちで「やろう」と盛り上がる風土がありますね。「24時間当直セミナー」は土日を使って行いますが、上の先生も自分の時間を割いてボランティアで来てくれるんです。受け身の人は誰もいません。それは本当にこの病院の良さだと思います。だから後期研修もこの病院に残りました。

子どもの笑顔がモチベーションになる小児科の仕事

── 後期研修では小児科を選択されました。

毛利:子どもは大好きです。それに、自分も子ども時代たくさん病院のお世話になったし、選択は自然なことでした。耳原総合病院は産科と小児科がありますが、重症患者は扱いません。だから最後は治癒して退院していく姿を見られるのがうれしいですね。

「先生に診てもらって良かった」の一言や、子どもが退院していくとき笑顔で「バイバイ」と言ってくれると、仕事に対するモチベーションも上がりますね。

──小児科ではどのようなことを担当されていますか。

毛利:小児科医療、救急外来、新生児と、子どもに関することはすべてです。毎月60人ぐらいが当院で生まれ、疾患等による入院患者も30人ぐらいいます。生まれた赤ん坊は何か問題がある場合を除き、上の先生の指導を得ながらすべて担当しています。帝王切開の場合は手術にも立ち会います。

今年から院長の方針でお産の数を倍にしようとしているので、新生児はまだまだ増えるかもしれません。ここは民医連の病院なので個室ベッド代を取りませんし、お産にかかる費用が抑えられるので、お母さん方にも注目されている病院だと思います。

──数多くの新生児を担当する上で気をつけていることは?

毛利:雑な仕事をしないことですね。何らかの疾患やトラブルは一定の確率で発生します。生まれる子どもの数が多ければトラブルもふえます。とはいえ、見た目ではすぐ気づかないこともあるし、新生児は何が起こるか分かりません。ほとんどの新生児は健康なのですが、その中にある少数の何かを見逃さないことが大事です。仕事が雑になるとそういう見逃しの可能性が出てくるので、丁寧に仕事をするように気をつけています。

──小児科の仕事は親御さんとの関わりも大事かと思います。

毛利:その通りです。やはり親が治療に満足してくれないと、次に何かあったときこの病院に来てもらえませんから、対話は大事にしています。

──苦労されたことなどはありますか?

毛利:研修医になりたての頃は、自分の学んだことを生かして治療したいという欲が大きく、親がどう思おうと医学的に正しければいいという方針でした。医学的に正しい治療、正しい投薬を選択していましたが、その一方で親御さんに対しての丁寧さに欠けていた部分がありました。

しかし親御さんの不満を上の先生を通して聞き、注意されて考えるようになったんです。今は絶対に必要な治療については主張しますが、まずは親御さんと患者がどんな治療を求めているか、求められているものは何かを第一に、細かいことも逐一説明するようにしています。説明が丁寧な先生を参考にしながら、相手に伝わるような説明を心がけています。

民医連の活動を通して、人間的に一回り成長

── 民医連はさまざまな社会活動を行っている病院でもありますが、そうした活動にも参加しているそうですね。

毛利:民医連がどのような組織か、入ってからいろんなことを学びました。活動に関しては特に強制されるものでもないし、自分次第だと思いますが、私は2013年には長崎、2015年にはニューヨークのNPT(核不拡散条約)再検討会議の平和活動に誘われ、参加させてもらいました。長崎では原爆の落ちた場所を訪れ、平和記念講演を聞き、被爆者から実際の体験を聞くことができました。

平和に関する活動は医療と結びつくこともあり、子どもたちの平和を願うということでも意味があると思います。自分の見識が広がり、政治経済などにも興味を持つようになりましたし、いい経験をさせてもらったと思います。これまで社会の動きに無関心でしたが、民医連の活動を通して自分の意見を持つようになったことは、大きいかもしれません。

──そんな民医連ですが、どのようなところが良いと感じますか。

毛利:やはり組織としてのつながりが強く、規模も全国にまたがっていて大きいことです。近畿地区の民医連の集まりのほか、年に1回全国から民医連の研修医が集まるセミナーもあります。地域が異なれば疾患の傾向も異なりますし、そういったことを聞くことで勉強になります。別の地域の医師と交流できるこのような機会はありがたいですね。行事や交流が多いのは民医連の特徴だと思います。

──耳原総合病院の良さについては。

毛利:やはり人の良さでしょうか。仕事内容やお給料が良いといった条件は働く上で気にする部分かもしれませんが、やはり仕事をする上では人間関係の良し悪しが何より大きいと思います。ここでは上の先生も常に気軽に挨拶してくれますし、飲み会に誘われることもあります。どの科も垣根が低くて居心地が良い病院です。

──これからどんな小児科医になっていきたいと思いますか?

毛利:やはり笑顔にあふれた優しい先生になるのが理想ですね。小児科医として子どもが幸せになる手助けをすることが一番です。新生児蘇生法の資格も取ろうとしているところですが、まだまだ勉強することがたくさんあります。

医師として確かな技量を身につけて、さらに子どもやご両親に信頼していただける医師になっていきたいと思います。

Message ― メッセージ ―

子どもの笑顔のエネルギーは、周りもみんな幸せにします。

― 毛利 陽介 ―

Profile

○所属 大阪民医連 耳原総合病院 小児科所属
○経歴 2013年、大阪市立大学医学部医学科卒。学生時代から10回以上耳原総合病院の勉強会や研修に参加。
2013年より耳原総合病院の初期研修プログラムを開始し、多くの科をローテーションで回る。
2015年より耳原総合病院にて後期研修を開始。小児科を選択し、子どもの医療のほぼすべてに関わっている。